byrne & baynes
ソニーやワーナーで数多くのAOR名盤が廉価復刻進行中の昨今だが、フランスのリイシュー・レーベル Favorite Recordings からも、密かにこんな大ダマが CD / Vinyl で。ドリームズヴィルからの初CD化(01年)から15年経ち、これがトータル3回目の復刻となる。

当時からのAORファンならご存知のように、最初のCD化は権利上の問題からオリジナル・アートワークが使えず、タイトルも『SWEET REVENGE』に変更。曲順も違えば音質も今イチ、という歯痒いシロモノだった。それから10年後に韓国プレスで限定オリジナル復刻。その国内仕様紙ジャケ盤を、我が Light Mellow's Choice / ヴィヴィド・サウンドで出したが、既に入手困難になっている。それを今度はヨーロッパ発信で、というワケだ。

さて、AOR好きで本作を聴いてない人は、それだけでもう万死に価する? でもそれぐらいの名盤。マッスル・ショールズのシンガー・ソングライター:ロバート・バーンと、現地スタジオのセッションマン:ブランドン・バーンズによるユニットなので、エアプレイ/TOTOファミリーの流れとはまったく異なる繊細なサウンドだが、ボビー・コールドウェルやウィルソン・ブラザーズのようなメロウでほのかにファンキーな音がお好きなら、必ずやお気に召すと確信している。

元々はロバート・バーンのソロ2作目として制作が進んだ本作。ところが、相方であるブランドン・バーンズの貢献が極めて大きく、ユニット名義でのリリースに変更された。ところが米国ではお蔵入りし、日本のみでリリースされた曰くつきの作である。ロバートはマイケル・ジョンソンやルブラン&カー、ジョニー・リヴァース、ロニー・ミルサップ、キャプテン&テニール、オズモンズ、ヘレン・レディ、ドクター・フックなどに楽曲提供し、その後もポップ・カントリー・フィールドで活躍(06年に急逝)。一方のブランドンは、まだ学生だったブライアン・マクナイトと知り合い、その売り出しに奔走した。その後もテイク6やフィリップ・ベイリー、ボーイズ II メン、ガイのダミオン・ホール、それにロビン・シックなどにも楽曲提供し、今やロバートを超える著名クリエイターとなった。

今回の復刻、タイミングが良いので日本でも出せないか、ある筋から打診してもらったが、残念ながら条件が合わず…。最新リマスターといっても日本じゃ3度目の復刻なので、そうそう大きな数字は望めませんって…。却ってアナログの方が需要が見込めそうだが、試しに入手してみたら、81年の徳間音工盤の解説がそっくりそのまま封入されていてビックリ。音源そのものは当時のプロデューサーに権利があるが、インナーはヤバくね? とはいえ、まだ未聴、未入手の人は、この貴重な機会を見逃さずに。