nothing but the funk

日本を代表するドラマーにして “グルーヴ・マスター” と謳われる沼澤 尚の実質的リーダー・グループ: Nothing But The Funk のジャパン・ツアー最終日@Billboard Live Tokyo 2nd show に足を運んだ。4日前に同じハコで東京初日を迎え、広島〜大阪と廻って評判もウナギ登り。とりわけ、ファンキーな人種が多い(?)大阪での盛り上がりが凄まじかったらしく、SNSを通じてその興奮ぶりが伝わってきた。

Nothing But The Funkの母体は、L.A.に留学していた沼澤が親しくなった、エディ・M(sax,vo)やカール・ペラーゾ(perc)、レイモンド・マッキンリー(b)、キャット・グレイ(kyd)ら、当時のプリンスやシーラ・Eのアルバム/ツアーに参加していた面々。そこから生まれたのが、沼澤、カール、キャットのトリオ:13 Cats だった。しかし沼澤が日本で忙しくなり、またカールがサンタナに加入したあたりで、13 Catsは自然消滅。それに代わる存在としてセッション・バンド的に組まれたのが、このNothing But The Funk、というわけだ。当然メンバーたちはそれぞれに忙しく、このツアーは約4年ぶりとなる。

本編80分+アンコール2曲、バラードなど1曲もなく、まさに名前通りの"Nothing But The Funk" ぶり。メンバーがステージに上がった途端に椅子を立ったオーディエンスも多く、ノッケからサイコーに盛り上がった。イントロから導かれたのは、ジェームス・ブラウン<Make It Funky>。ラストも同じくJ.B.<Soul Power>で、途中プリンス・トリビュートとして、<10> (マッドハウス)〜<D.M.S.R.>(プリンス)〜<Mutiny>(ザ・ファミリー)といった関連メドレーが挟まれる。それほどポピュラーな曲ではないので、客席はどの程度反応するかと思ったが、そんな些細なコトは関係なく、ただひたすらグルーヴに合わせて踊るのみ。中にはトランス状態に入ってしまったかの如く、一心不乱に踊っている女性もいて、まさに徹頭徹尾 Funk Funk Funk の応酬。アーバン好きなカナザワは、立ってリズムに合わせて揺れながら聴いていたけど、実はちょっと Too Much だったと告白してしまおう。

Nothing But The Funk と名乗るだけあり、ファンク・バンドとしてのプロポーションはトップ・ランク。それを実証する、熱の籠ったショウだった。でも少し見方を変えてインスト・バンドとして接すると、若干の物足りなさも。沼澤の激震グルーヴ、カール・ペラーゾの神がったティンバレス・プレイを別にしたら、ソロイストが総じて弱く、「さすが!」と思わせてくれたのは、オルガンやクラヴィネット、ヴィンテージ・シンセ(の音色)を駆って多彩なフレーズを繰り出した森 俊之だけだった。他のメンバー個々は、バッキングには長けていても、前面にフィーチャーされて長いアドリブを披露するとテンションが保てず、華もないから、ゆる〜いソロ・パフォーマンスになってしまう。それなのに、リフを延々ループさせてインスト楽曲として機能させるため、ダラダラ長くなった曲もあった。それこそ演奏陣だけでも十分芸達者なタワー・オブ・パワーに比べると、どうしたって見劣りしちゃう。パーマネントのベテラン・バンドと、久しぶりに集まったセッション・バンドを比べるな!という声もあろうが、こうした実務派ミュージシャンを集めたバンドがインスト・メインで勝負するなら(エディM.が少し歌うが)、単に有名曲のフレーズを盛り込むだけでなく、各曲のアレンジ自体にもうひと工夫あって良かった気がした。

とはいえ、グルーヴ・パフォーマンスは超一流。最終ステージというコトもあってか、アンコールでは客席にいたオルケスタ・デラ・ルスやアマゾンズ(だそうです…某SNS情報)のメンバーがステージに呼び込まれ、メンバーと絡みながら踊っていた。

さて、これから初めてのレコーディングに入るという Nothing But The Funk。ファンク・バンドとしての今後は、そのアルバム如何に掛かっているのかも。そうなると、実際のアレンジ面のキモは、おそらく森の双肩に掛かってくることになりそう。それが出た上で、もう一度ライヴを観てみたいところである。