yes_japan tour 2016
イエスのジャパン・ツアー2016最終日@渋谷・Bunkamura オーチャードホールを観た。さすがに73年の初来日は観てないものの、<Owner Of A Lonely Heart>ヒット後のツアー、8人組のユニオン・ツアー、そしてその後2度ほど来日公演に参戦。しかし、やっぱり究極の8人体制を観てしまったあとのステージはどうも物足りず、そのまま足が遠のいた。今回の来日でも、『YESSONGS』と『TALES FROM TOPOGRAPHIC OCEANS(海洋地形学の物語)』からの曲を演るという当初のアナウンスを聞いたとコロで、食指は動かず。でもそのあと『DRAMA』からも何曲かプレイする、そして今後は『DRAMA』の楽曲は演奏しない、なんて追加情報が入って、俄然行く気に。もちろん『こわれもの( FRAGILE)』や『危機( CLOSETO THE EDGE)』がイエスの代表作なのは分かっちゃいるが、天邪鬼なカナザワは、むしろ、『RELAYER』や『究極(GOING FOR THE ONE)』、そして『DRAMA』に愛着を持っちゃうのよ。

入り口で特製クリアファイル(上掲/裏は『DRAMA』のジャケ)を受け取り、公演数日前にゲットした座席へ。1階席後方には空席も目立ったが、ココで4回公演もあれば致し方なしか。ご存知のようにギループの牽引役だったクリス・スクワイアが昨年亡くなり、以前サポート・メンバーとしてツアーに同行していたビリー・シャーウッドが後任ベース・プレイヤーで加入。今回はそのラインナップでの初来日になる。ところが今度はアラン・ホワイトが腰痛で満足にドラムが叩けず、夏の北米ツアーではジェイ・シェレンが代行。日本ツアーにはアランが同行したものの、本編ではシェレンがドラムに座り、アランはアンコール2曲のみのプレイだった。つまり『YESSONGS』だ『海洋地形学〜』だと言っても、当時のメンバーは最早スティーヴ・ハウのみ(+半人前のアラン)。『DRAMA』でジェフ・ダウンズ(kyd)が入って、ようやく2.5人前といった感じだった。

客電が落ちると、まずは『TORMATO』の<Onward>が流れてきて、スクリーンでのクリス・トリビュート。これがオーディンスの拍手で幕を閉じると、メンバー登場。ショーはいきなり『DRAMA』からの<Machine Messiah>、<White Car>、<Tempus Fugit>の連発で、カナザワ静かに大興奮する。4代目シンガーのジョン・デイヴィソンをジョン・アンダーソンと比べて云々する人もいるが、『DRAMA』は元からトレヴァー・ホーンだったので何の問題もない。クリスの後任ビリーは、ほとんどクリスの影武者に徹するプレイで、目を閉じて聴いていると、そのままクリスが弾いているよう。ルックスは相当に老け込んでしまったスティーヴも、指の方はなかなか好調だ。

それに続いて、『YES ALBUM(サード)』から<Your Move/I’ve Seen All Good People>と<Perpetual Change>、『危機』から<And You And I(同志)>、『こわれもの』から<Heart Of The Sunrise(燃える朝焼け)』を矢継ぎ早にプレイし、前半終了。このあたりが『YESSONGS』のパートなのだが、要はスティーヴ・ハウ参加後のイエスの最もポップな部分をまとめた、と言えるだろうか。特に印象的だったのが、ジョンとビリー、+時々スティーヴ、というコーラス隊。これまでクリスがヴォーカル・ハーモニーの要と言われてきたが、今回は本当に声のまとまりが感じられ、スティーヴが比較的真面目に歌っている感があった。

しばしのインターバルを挟んで、『海洋地形学〜』をプレイする後半へ。演目は<The Revealing Science of God(神の啓示)>と<Ritual(儀式)>で、その繋ぎにはハウのギター・ソロによる<Leaves Of Green>(The Ancient〜古代文明の一部)が披露された。ただ『海洋地形学〜』の楽曲は、かなり緻密で手の込んだレコーディングをしているので、ライヴでの再現には若干厳しい面も。ぶっちゃけ、時々音が切れてスカスカになっちゃうんだな。逆に原曲のフォーキーな部分が垣間見える面白さはあったけど、一方で決してスキルフルではないジェフのプレイの限界を見た気がした。アルバム発売直後なら、多少無理してでも新曲を披露する意味はあるが、もう40年前の作品だからなぁ…。それにクリスやアランをフィーチャーしていた<Ritual>を、両人不在で演るのってどうよ? どうも『海洋地形学〜』に関しては、ライヴで聴くより、発売されたばかりの5.1chサラウンド盤で楽しんだ方が正解みたいだ。

それでもアンコールではアランが出てきて、お約束の<Roundabout>、そして<Starship Trooper>をプレイし、大喝采で大団円を迎えた。

終演後、友人と飯を食ったりしながら語り合ったが、今回のイエスのライヴは、かなり良かったと意見が一致。その友人は、前回日本公演も観たそうだが、それとは比べモノにならなかったと言っていた。その成功の原因は、おそらく若手がドラムを叩いたから、とココでも同意見。というのは、カナザワがイエスを見切ったのは、近年のライヴ映像を見て、旧曲が軒並みテンポ・ダウンしているのを発見し、もう昔のようにスピード感ある演奏は不可能だな、と悟ったからだった。ところが今回はリズム、ヴォーカル隊が総入れ替えとなり、図らずもリフレッシュされる結果に(クリスが元気ならベースは問題なかったと思うが)。それが今回のイエス復活劇のポイントだったと思う。アンコールから登場したアランは無難に2曲叩き切ったものの、決して本来のドラミングではなかった。

また、去年のTOTOとの北米ツアーを観た別の知り合いの話では、その頃もかなりヒドイ内容だったとか。何せビリーはまだ自分のポジションに馴染んでおらず、スティーヴもヨレヨレで…。それこそ友人は、2〜3曲聴いて外へ出てしまったというから、相当なモンだろう。故に今年の日本公演はまったく期待してなかったが、同じバンドとは思えぬほど良くなってたそうである。今のリーダーはスティーヴだが、演奏がカッチリまとまったのは、今ツアーからビリーが音楽監督的に現場を仕切るようになったためらしい。

デヴィッド・ペイチとスティーヴ・ポーカロのプロデュースでデビューしたLodgicの出身で、World Tradeのメンバーとして活躍する傍ら、エア・サプライのサポートなどでセッション歴も豊富なビリー・シャーウッド。イエス・ファンにはクリスとのプロジェクト:コンスピラシーでも知られている。今後イエスの進路を決める鍵は、どうやらこの人が握っているようだな。