eugen botos finally
さて今日から師走。とはいえ、ぜんぜん師の器ではないカナザワなのに、既に走りっぱなしですが… しかも風邪がいよいよ本格化してきて、鼻水タラタラ、咳もコンコン。熱がないのが救いだが、実は明日は検診がある。こんな状況で、胃の内視鏡なんてできるのか? しかも夜はライヴだしぃ〜。

ってな状況ではあるけれど、ココで一発、我が Light Mellow Searches からのメガトン級オススメ・アイテムをご紹介。なんと、旧東欧圏はスロヴァキアの3人組ジャズ・ファンク・グループ、ユージン・ボトス・ファイナリーの本邦デビュー作『FINAL DEFINITION』がそれだ。

…とある筋から紹介され、音を聴いてクリビツテンギョー バカウマでしかもカッコ良い。サウンド的にはジャズ・ファンク、アシッド・ジャズ、アーバン・ポップあたりをミックスしたハイブリッドなもので、すぐに思い浮かぶのはレヴェル42、メゾフォルテ、インコグニート、カシオペアあたり。メンバーは、マルチな才能を持つキーボード奏者ユージン・ボトスを中心に、ギターのマーティン・コレダ、ベースのロバート・ヴィズヴァリの3人で、首都ブラチスラヴァの音楽学校で知り合い、全員がチック・コリア・エレクトリック・バンドとレヴェル42の大ファンだったことから意気投合して、02年にグループを結成した。10年に1stアルバム『MY SPACE』を、“Eugen Botos Project feat. Finally”名義で発表している。この『FINAL DEFINITION』は、それに次ぐ2作目。ユージンは日本のジャズ・フュージョンに造詣が深く、カシオペア以外にも渡辺貞夫、ジンサク、ディメンション、T-スクエア等などを聴き込んでいる。それこそ、「彼らがいなかったら、今のような音楽を演ってなかったかもしれない」と語るほどだ。

しかもメンバーは、ジャンルを超越した名演奏家してキャリアを歩んでいる。まずユージンはヴァイオリン奏者としても有名で、スロヴァキア国立劇場でオペラを8年間プレイ。ロバートは今もスロヴァキア・フィルハーモニー・オーケストラの首席ベース奏者でもあるそうだ。名門音楽学校の同窓生で、クラシックのキャリアも、というと、スウェーデンのダーティ・ループスを思わせたりする。もっともファイナリーにはシンガー不在だが…。

その代わりにビックリするのが、幅広いミュージシャン交流に端を発する多彩なゲスト陣だ。ザッと挙げておくと、ヴォーカルでブライアン・マクナイト、メイザ・リーク、アンジェラ・ジョンソン、そして元アース・ウインド&ファイアーのシェルドン・レイノルズに、何とディオンヌ・ワーウィックまで。そして演奏陣ではマーカス・ミラー、ヴィクター・ウッテン、ジェフ・ローバー、デイヴ・ウェックル、エリック・マリエンサル、アース・ウインド&ファイアー・ホーンズ等など。無名ながらルーサー・ヴァンドロスそっくりの歌声を披露する隠し玉もいる。ほーら、興味湧いてきたでしょ

ひとつ種明かをしておくと、メイザが歌っている<Beautiful Dreamer>は、彼女の13年作でグラミーにもノミネートされた『BLUE VELVET SOUL』の冒頭を飾った楽曲。ユージンのフェイヴァリット・シンガーだったメイザに、“もし気に入ったら使って”と曲を書いて送ったところ、見事に気に入ってもらってレコーディングに参加した。それをココにも再収録したワケである。本作完成後もユージンの人脈は広がり続け、最近はブルーイとも意気投合。アース・ウインド&ファイアーの次作にも声が掛かっているそうだ。

実を言うと、最初に聴かされた音源は、インストゥルメンタル曲が中心だった。だがスムーズ・ジャズのマーケットが存在しない日本だと、インストでは勝負できない。ところが彼らにはストックしていた歌モノ・トラックがたくさんあった。そこでそれを出してもらって、ヴォーカル曲メインのジャパン・エディションを組んだ次第。本当にものすごく可能性を秘めた連中だと思う。ユージンの名は、きっと覚えておいて損はない。