hiromi_spark
昨夜は早めに寝床へもぐり、夜中にもたっぷり水分補給して朝までグッスリ おかげで風邪はピークを越えたみたいで、身体がスッキリ軽い。咳はまだ出るけれど、何とか内視鏡検査もライヴも予定通り。仕事だけがちょっと滞り気味ではあるけれど…

夜は知り合いにお誘い戴き、上原ひろみ『SPARK』ワールド・ツアーの東京初日@東京国際フォーラム・ホールAへ。前回ツアーでは、このところずっと一緒に演っているサイモン・フィリップス(ds)とアンソニー・ジャクソン(b)が揃って病欠。今回のツアーではそのトライアングルが復活するはずだったが、アンソニーはドクター・ストップが長引き、日本公演のトラとしてジャコ・フォロワーとして知られるフランス人プレイヤー:アドリアン・フェロー(ジョン・マクラフリン、チック・コリアなどと共演)が共演することになった。

日本でCDが出る前、米国先行デビューとなった1stが話題になり始めた頃から、輸入盤で彼女を聴いていたので、映像を観る機会は多く、すっかりライヴに足を運んだ気になっていた。が、改めて振り返ってみると、何とナマで彼女を観るのはコレが初めて。以前から何度かお声掛け戴いてたが、何故かタイミングが合わなかったのだ。それでも最初に映像を観た頃と印象は変わらず、彼女が生粋の音楽人であることを窺わせた。確か昔に観たのは、音楽学校時代の仲間を従えて野外のジャズ・フェスか何かに出演した時のステージで、出番もまだ空が明るい時間帯だったはず。それが今ではサイモンやアドリアンのような世界的名手を従えて、ワールド・ツアーを行なう人気ぶり。5000人収容のフォーラム公演3日間も即日ソールドアウトし、いつの公演もチケット入手は困難を極めている。

それでも、これだけ注目されるとネガティヴな輩も少なからず現れるようで。でもその意見をかいつまむと、何だがジャズ原理主義的な意見が主らしく、ただオーセンティックなジャズ・フォーマットに固執しているようにしか見えない。でもカナザワの場合、最初の時の印象が「何だ、プログレぢゃん! それもキース・エマーソンみたい」と思ってしまった人なので、彼女がどんどんジャズから脱線してもまったく違和感がないし、むしろその方が面白いと思っている。そして実際にライヴを目の当たりにして、余計その思いが強くなった。ボキャブラリーやイディオムはジャズでも、その型にハマるのではなく、積極的にアウトしていく。それがジャズやクラシックの素養を持つプログレ勢に接近するのは、当然の成り行きだ。

最初にサイモンやアンソニーとトリオを組んだ時には、さすがに驚いた。けれど、彼女の音楽性を知っていればすぐに合点が行くはず。TOTOやジェフ・ベックでのサイモンは、それこそ彼の音楽遍歴のホンの一部に過ぎない。特に今回はベースがアドリアンなので、アンソニーの時よりジャズ・ロック的要素が強くなった気がした。

セットリストは新作『SPARK』が中心。とはいえ、ステージごとにスポンテイニャスなショウを展開する人だから、楽曲は単なるモチーフ、あるいはテーマに過ぎない。2〜3曲ごとにMCで場を和ませたあとは、ピアノの前で一呼吸おき、祈るような仕草で集中力を高める。そして一度鍵盤に触れたら、あとはもう感情の赴くまま…。楽しげに指を踊らせたと思ったら、時には慈しむようにキーを押したり、あるいは腰を浮かせてパーカッシヴに叩いたりと、もう自由奔放七変化。両サイドに据えられた巨大スクリーンも実は重要な役割を担っていて、ひろみ嬢のキュートな笑顔やハッピーな微笑み、苦悶の表情、挑戦的な眼差し、等などを克明に映していく。立ち姿全体を見ていると、ノッている時の彼女の右足の動きの激しさに改めてビックリ(左足はペダルを踏んでいる)。リズムを取る、なんて生易しいモノじゃなく、ほとんどスリコギをぶん回しているような状態だ。ロックでは言えば、ヘッド・バンギングみたいなモンでしょ、あれは

そうやって、気取ったり計算したり、というところが見えない天然さ、ピュアネスが、音楽の愉しみ方を知り尽くしたオーディエンスを強く惹きつける。ハイスクールの学芸会みたいな素人ショウが少なくない昨今の音楽界だけど、こういう人がシッカリ評価されて売れてるうちは、まだまだ捨てたモンじゃないと思うな。そして何より、まずはライヴを観に行け!、を再確認。個人的には、終演後のバックステージにサイモンを訪ね、「801からのファンです」と伝えたところ、大きなジェスチャーで歓迎してくれたのが嬉しかった。