stones_blue_lonesome
このところ、繰り返し聴く新譜といえばブルーノ・マーズが筆頭だったけど、ストーンズが届いてからはコレばっかし。迷惑すぎる箱モノ・ベスト『GRRR!』(中身じゃなくて大きさが…)に新曲2曲が収録されていたが、新録アルバムとしては『A BIGGER BANG』以来11年ぶりだそうだ。でもライヴ映像の類がエラい勢いでリリースされ続けていたので、枯渇感はまるでなく…。とはいえ、ファンの間で「そろそろ…」という空気が強まる前に、彼らは既に録音を終えてしまっていたそうだ。

内容は既報の通り、原点回帰のブルース・カヴァー集。元々は普通にスタジオ入りして新曲を書く予定だったのに、ウォーミング・アップのつもりでプレイしていたブルース・チューンの数々にみんなハマってしまい、そのままレコーディングに突入したようだ。

カヴァーされたのは、リトル・ウォルター4曲、ハウリン・ウルフ2曲、マジック・サム、ジョニー・テイラー、エディ・テイラー、ライトニン・スリム、ジミー・リード。オーティス・ラッシュ各1曲の全12曲。著名ブルース・メンの名がズラリと並ぶけど、カナザワが実際に知っている曲はごく僅か。敢えて有名曲を避け、ブルーズ愛好家の矜持を示したような感がある。たまたまエリック・クラプトンが同じスタジオにいたので参加してもらった、というのも、なんか出来過ぎ。ついでに、「お前ら、もっとブルース勉強せぇよ!」とでも言いたかったのかな?

ブルースというとギタリストが元気になりそうなイメージがあるけれど、ココで一番威勢が良いのは、実はミック・ジャガーだ。普段は到底聴けないような鬼気迫るシャウト、泣き叫ぶブルース・ハープを披露していて、とても70歳越えのシンガーとは思えない。歳喰ってジャズやR&Bに回帰するミュージシャンは掃いて捨てるほどいるが、まったくもって趣味や気取って作ったアルバムではなく、愛情を通り越して自分たちの存在価値を問うような真剣さがある。彼らほどのキャリアにして、なぜココまで演ってしまうのだろうか?

イヤ、そうじゃない。彼らほどのキャリアだからこそ、ココまで演るのだ。一番若いロン・ウッドで69歳、年長チャーリー・ワッツに到っては75歳。おそらくミック、キース、チャーリーのトライアングルが崩れればストーンズは終わりだろうから、そういう危機感とは常に背中合わせだ。もちろん、メンバー個々にはそれほど切羽詰まった感はなかっただろうが、そういう気持ちを互いに共有したからこそ、スタジオ入りして一気に方向性が定り、僅か3日でレコーディングが終わった。そういう意味でこのカヴァー集は、 作るべくして作ったアルバム。自分たちの歴史に落とし前をつける、という意味もあるだろうし、ブルースへの感謝を込めて次世代に歌い継いだモノでもあるだろう。最近のツアーの様子を見て、やたら明るい表情が目立つのは、きっと達成感あってのこと。歴史的なキューバ公演を終え、この『BLUE & LONESOME』を発表した今、あとはもう走れる所まで走り続けるのみ。そんな心境なのかもしれない。