tony sciuto 016
来週21日は、カナザワが監修したり解説を書いた作品がいくつか登場するので、このポストから順次紹介していきたい。まずは『ISLAND NIGHTS』でお馴染みのAOR シンガー、トニー・シュートのニュー・アルバム『TEMPTATION ALLEY』から。

振り返れば、12年8月の2度目の日本公演(@Cotton Club)に合わせて作られた自主制作の前作『UNDER THE RADER』から、丸4年。その日本盤で、ジャパン・ツアーのライヴ盤と抱き合わせてリリースされた『UNDER THE RADER 〜 deluxe edition』から数えても、およそ2年半ぶりになる。寡作になったベテラン勢にあっては比較的コンスタントな活動を展開し、地元ボルチモアでは定期的にライヴを行っているトニーだからこその新作だろう。

…とはいえ、『TEMPTATION ALLEY』のタイトルに何故か覚えがある、という人もおられよう。その辺りを、トニーのメール・インタビューから引用しよう。
「タイトル・ソング<Temptation Alley>は、『ISLAND NIGHTS』の時期に書かれた楽曲なんだ。それでこれを新作のテーマとアルバム・ジャケットにしたら素晴らしいモノになるんじゃないか、と思った。『ISLAND NIGHTS』を楽しんでくれた人々に、その延長といえるコンセプトのアルバムを楽しんでもらおう、とね」

この曲は元々、米国では未発表のままの2nd『BE MY RADIO』(日本ではCOOL SOUNDから発売済)用に書かれたもの。本盤のバックインレーのアートワークに若いトニーのショットを使ったのも、こうしたコンセプトに基づいている。タイトルに覚えがあるのは、以前『ISLAND NIGHTS』再発盤(11年の紙ジャケ盤)にボーナス収録されたからで、今回は少し手を加えたようだ。この手のリテイクはもう1曲あって、キャッチーなサビを持つ<Going Thru The Emotions>も『BE MY RADIO』用に録音されたモノ。これはかなり『ISLAND NIGHTS』っぽい。

更にボーナス・トラック<One More Time Until Tomorrow>も、『ISLAND NIGHTS』紙ジャケ盤からの再収録。リッチー・ジトーとジョーイ・カルボーンがプロデュース/演奏で参加し、ドラムは故カルロス・ヴェガ、サックスはヒートのトム・サヴィアーノ。録音は78年と古いが、「このアルバムにピッタリなので入れて欲しい」と、トニーが強く希望してきた。

トータルの作風としては、AORアルバムというよりバラエティに富んだポップ・ロック作品。ビートルズ風もあれば、パワー・ポップ・テイスト、内省的なスロウ・チューン、リトル・リヴァー・バンド在籍時に書いたウエストコースト・ナンバー、トニーのルーツを覗かせたビーチ・ボーイズ風ノスタルジック・バラード、そしてレゲエ・ビートもアリと、めっぽう彩り豊か。ゲストにピーター・ベケットが入っているほか、ブレーンである弟マイケル、そして2人の愛娘たちも一部コーラスで参加している。いわゆる名作ではないけれど、繰り返して聴いているとジワジワ愛着が湧いてくる、そんな好盤。おそらくは、メロディが良いから聴くほどに味わいが増すんじゃないかな? できることなら再来日を実現させたいものである。