広谷順子1st広谷順子2nd
ようやくの再CD化実現! 日本のポップス・シーンを影から支えたセッション・シンガー:広谷順子が、79〜80年にシンガー・ソングライターとして発表した『その愛に』『Blendy』の2作を、我が “Light Mellow 和モノ” シリーズから。アルバム未収シングル曲、お蔵入りした未発表曲などをそれぞれにボーナス収録し、この21日登場です!

1stアルバム『その愛に…』は、79年5月に発売された1stアルバム。後の彼女を知っていると、そのアートワークや歌詞からはフォークっぽい香り、和のテイストが若干強く感じられる。カレン・カーペンターに憧れる早熟の洋楽少女だった広谷は、アマチュア時代、ピアノの弾き語りで歌ってきた。それもあって、ポップス志向のメロディに和風の歌詞が乗ると面白いのでは?というアイディアが生まれたらしい。

とはいえ松任谷正隆のアレンジ、アルファ・ミュージック制作ゆえ、全体的なサウンドはやはり洋楽テイスト。マンタ氏以下、高橋幸宏/林立夫/村上秀一(ds)、高水健司/宮下恵輔(b)、鈴木茂/松原正樹(g)、吉川忠英/笛吹利明/瀬戸龍介(ac.g)、斎藤ノブ(perc)...という参加メンバーも豪華絢爛だ。しかも驚くのは、この時点で既に彼女のヴォーカルが完成の域に達している点。大きく歌い上げるタイプではないものの、ノーブルでクセがなく、しかもピッチの安定感が素晴らしい。それまで完全我流で、デビュー前に少しヴォーカル・トレーニングを受けただけ、というのが信じられない。もっともピアノは幼少から習っていて、好きになった曲をすぐに耳コピーしていたそうだから、やはり音感が良かったのだろう。

ボーナス・トラック2曲は、アルバム未収のデビュー曲<道>と、そのB面曲<限りない空>。<道>はアルファ社長:村井邦彦の書き下ろしで、国際児童年のキャンペーン・ソングだった。

次いで80年2月に発売されたのが、2ndアルバムの『Blendy』。よりシティ・ポップス寄りの作風で、明るい曲を中心にライヴで盛り上がる曲を入れるなど、様々なタイプの曲にトライしている。だから『Blendy』。ジャケットの広谷の傍に置かれたコーヒーは、ちょっとした茶目っ気かな。

アレンジは大橋純子のパートナー:佐藤健。参加ミュージシャンには、上原“ユカリ”裕/田中清司(ds)、高水健二/岡沢茂/宮下恵輔(b)、水谷公生/今 剛/矢島賢/鳥山雄司(g)、笛吹利明/吉川忠英(ac.g)、渋井博/佐藤準(kyd)、ペッカー(perc)等などが名を連ねる。当時ソロ・デビュー前だった鳥山は、まだ大学生ながらバック・バンドのバンマスを務めていたそう。広谷がバック・コーラスの魅力を知ったのも、このアルバムのレコーディングで、そうした意味では今の彼女の原点がココにあると言ってもイイ。

と同時に『Blendy』は、曲作りのキャパシティを広げるキッカケになった作品でも。広谷が中森明菜や南野陽子、WINK、森山良子、伊東ゆかり、ラジ、サーカスなどに楽曲提供していたのは、熱心なファンなら先刻ご存知だろう。その最初、彼女のソングライターとしてのデビュー曲が<Day Dreamin’>。元々はサーカス<ミスター・サマータイム>のB面曲だった。

2ndのボーナス・トラックは、アルバム未収の4thシングル<恋模様>と、そのカップリング<あなたのいる景色>、同じく5thシングル<天使のひとりごと>と<南風にのせて>。この<天使のひとりごと>はTBS系のTVドラマ『わが子よ』の主題歌だったが、CDの解説用にご本人に取材する中で、驚きの事実が判明する。この主題歌には元々、赤い鳥<翼をください>のカヴァーがテーマに予定され、一旦は広谷もレコーディングまで済ませた。が彼女には思うところがあり、 “ココは是非自分の曲で!” と珍しくわがままを押し通し、見事<天使のひとりごと>が採用に。録音済みの<翼をください>は敢えなくお蔵入りとなった。だから「きっと何処かにマスター・テープが残っているはず」というのだ。

「ウーム、これは聞き捨てならない!」と、すぐに担当氏にマスターテープの捜査を依頼。でもそれが実を結んで、こうしてココに初お目見えとなった。何せ彼女自身が、「録音してからマトモに聴いてない」というレア・トラックである。再発企画を出した時から、シングルまで収めたコンプリート・リイシューを目指していたが、コレは予期せぬ素晴らしいオマケ。20年前の選書盤をお持ちの方も、まさしく must buy である。

はてさて、これでカナザワも少し肩の荷が下りた気分。ずいぶん前にご主人:木戸やすひろさんのソロ作を復刻させていたご縁で、順子さんとは以前からお付き合いがあったけど、これでようやく約束が果たせましたわ…