tomita lab_superfine
待望の冨田ラボ、5thアルバム。発売から既に3週間経ち、何度か繰り返して聴いているうちに、だんだんシックリくるようになった。氏がドナルド・フェイゲンの研究本『ナイトフライ 録音芸術の作法と鑑賞法』を上梓した時にトーク・ショウのご指名を受け、その時に少しお話させて戴いたが、その頃から彼の興味はロバート・グラスパーやハイエイタス・カイヨーテなどのフィーチャー・ジャズに向かっていて。その後フル・プロデュースした bird の『LUSH』も完全にそちら向きの作品だったから、冨田ラボの新作も当然そうしたテイストになることが予測できた。

それでも bird はクラブ・ミュージックの出自を持つ女性シンガー。だからファンにも斬新な音への免疫がある。が、冨田氏の場合、創造性溢れるサウンド・クリエイターとは言っても、基本はJ-POPの売れっ子プロデューサー。オーケストレイションがユニークな一方で、シンガーには松任谷由実や大貫妙子、高橋幸宏、 佐野元春、原 由子、キリンジ、CHEMISTRY、横山剣、椎名林檎、ハナレグミ等など、ベテランや有名どころをキャスティングし、バランス感を保ちながら良質な今様ポップスを成立させてきた。

ところが今回は、名前が通っているのは坂本真綾ぐらい。他にはYONCE(Suchmos)、眈訃淑拭cero)、コムアイ(水曜日のカンパネラ)、安部勇磨(never young beach)、城戸あき子(CICADA)に、AKIO、藤原さくらといった若手ヴォーカリストばかりを起用している。自分はSuchmos も cero もアルバムを聴いているが、正直メンバーの名前まではインプットしてなかった。それだけフレッシュで旬な顔ぶれを選んだのである。

つまりは、それだけ新しいコトをやっている、というのをアピールしたかったのだろう。それでも先行シングルとなった<Radio体操ガール>を聴いて、戸惑ったのは確か。ポップ・フィールドでココまでエクスペリメンタルなコトをやってしまって良いのか?と思ったし、<Radio体操ガール>に続いて登場する<冨田魚店>にも驚いた。そのブッ飛び加減が新作に対するイメージを支配してしまい、「何だ、コレは…?」という疑問が頭から離れなくなってしまった。

しかし聴き込むうちに、ドラスティックに変化した表層面とは違った普遍的魅力、冨田氏ならではのメロディ・ラインとか、サウンドとヴォーカルのバランス感が掴めてきて、自分の中での直地点が見えてきた。アルバムの頭とラストを締めるインスト曲には、今年亡くなったクラウス・オガーマンへのトリビュートの意を込めたとか。今作ではいつになくリズムに凝った楽曲が多いので、敢えてインストにストリングスを入れたのかも知れない。

…というワケで、最初は少し取っ付きにくかった最新作も、気がつけば “Superfine” な印象に。ちなみこの言葉は、“極上” と同時に “微細” という意味も持っているので、冨田氏には殊更ピッタリ。これは来年2月のライヴも観に行かなかくては。