randy hebert
“プライベート(自主制作)AORの知る人ぞ知る傑作、ついに世界初CD化!” とのコピーで登場したランディ・ヘバートの84年2nd。リイシューしたのは、例によってCreole Stream Musicさん。レーベル名通り、ラテン・テイスト入りの混成サウンドを熱心にディグしていて、いつも頭が下がる。しかもそのカタログにはAOR寄りの作品が多く、中にはパーカー・ブラザーズのように先を越されて思わず嫉妬しちゃう極上アイテムも。ただ大抵は「こんなの、よく見つけるなぁ…」というレア玉で、カナザワの感覚では「好きモノがアナログで持ってれば充分」と思うシロモノ。慌てて大枚出してゲットする価値はなくとも、CD化で普通に買えるなら、それに越したことはない。

このランディ・ヘバードもそういうタイプ。ファミリー・ネームがジャケットのような綴り、出身もルイジアナなので、やはりヒスパニック系の血筋だろうが、その音にラテンの色は稀薄だ。本来はジャズ・フュージョン系のギタリストらしいが、ココではキーボード中心にすべての楽器を自身でプレイし、作編曲から歌、プロデュースまで一人で作り上げている。1作目はフュージョン作だそうだが、この2作めは ほぼ完璧なアーバンAOR。セクシー・ミディアム<Ground Zero>は、何だか Renaja みたいでビックリした。全8曲中インストは1曲だけで、他はランディ自身のヴォーカル入り。そしてそのヘタウマ加減が、甘い歌声と相まって程良い味わいを醸し出す。

ただし、帯裏に書かれたコメント「とても一人で歌って演奏しているとは思えないクオリティ」は、ちょいと褒めすぎ。確かにアレンジに関しちゃ素晴らしいセンスを発揮して、“これは” と思わせてくれるが、如何せんリズムが激チープで… 84年といえば、すでにリン・ドラムも808(ヤオヤ=Roland TR-808)もあったはずなのに、そこはルーラルな自主制作モノ。高価な最新機材など使えず、プリセットに毛が生えたような初期型リズム・ボックスで作ったのではないか。それこそ今の時代なら、プリ・プロダクションのクオリティにも達していない。上モノが良質なだけに、そのリズムの安易さが残念至極。これだけセンスがあるのなら、リズム・セクションだけでもナマにできなかったのかしらね? 艶っぽいスターター<Take Me To Your Love>にはAOR好きの多くが耳をそばだてるはずだし、ラストの<Losin' Control>なんて、まるでマイケル・フランクス<Monkey See, Monkey Do>の80's版。せっかくのハネ系ナンバーも、リズムがベタッとしているので楽曲自体の魅力を生かしきれない。そのあたりを指摘できる良いプロデューサー、もしくは作品をトータルに俯瞰できる客観的第三者が不在なのも、自主制作の難点だ。もっともコレは、現在も克服し難いインディ制作の落とし穴だけれど。

ちなみにこのCD、宣伝のキャッチコピーが効いたか、発売1ヶ月でメーカー在庫がなくなったらしい。初回プレスは数百枚にも満たないと思われるが、おそらく再プレスが掛かるはずなので、気になる方はお見逃しなく。