jack tempchin 016
イーグルスに<Peaceful Easy Feeling>や<Already Gone>を提供したことで知られるシンガー・ソングライター、ジャック・テンプチン。そのテンプチンの16年最新作、『ONE MORE SONG』が未聴の山から出てきた。このところは Blue Elan なるインディ・レーベルに軸足を置いて、いつになく前向きに活動している。

個人的には、ソロになってからのグレン・フライの作曲パートナーという印象が特に強く、<True Love>や<Sexy Girl>、 <You Belong to The City> ,<Smuggler’s Blues>、 <I Found Somebody>、<Soul Searchin>、<Livin’ Right>と、グレンのソロ・ヒットの多くを共作。それこそカナザワのフェイヴァリット・バラード<The One You Love(恋人)>を書いているというだけで、もう絶対に忘れ得ぬ人、なのだ。でも「好き」なクセにすぐ聴かないのは、良くも悪くも “裏切られない” から、弾き語りか、もしくはごくシンプルなバッキング(自身の多重録音含む)が付くだけだから、外すことがない代わりにインパクトもない。でもその安堵感こそ、テンプチンの持ち味という気がする。

テンプチンがグレンの訃報(昨年1月18日没、もうすぐ1周忌だわ…)を知ったのは、ちょうど弾き語りのライヴ・ツアー中だった日本でのこと。2人はグレンがJ.D.サウザーとロングブランチ・ペニーホイッスル(間もなくCD化)を組んでいた頃に知り合い、テンプチンがL.A.に出てからは、彼らのトルヴァドール公演にブルース・ハープで飛び入りしていたらしい。そのテンプチンが「いま制作中」とステージで言っていたアルバムがコレである。

予想通り中身は至ってシンプル。でも中心になっているのは、自身では今まであまり歌ってこなかったセルフ・カヴァーの数々で。オープニング<Slow Dancing>と次の<Singing In The Streets>は、彼自身が在籍したファンキー・キングス時代のナンバーで、前者はジョニー・リヴァースが<Swayin' To The Music>のタイトルで全米トップ10入り(77年)させた。<Old River>と<I Got Her Right Where She Wants To Me>は、デレク&ドミノス出身のボビー・ホイットロックとの共作曲。後者ではワディ・ワクテルがギターを弾いている。

<Circle Ties That Bind>は、テンプチンが曲作りを始めた頃に書いた古い楽曲。地元サンディエゴのフォーク・クラブで歌っていたそうだが、このクラブこそがグレンやJ.D.、ジャクソン・ブラウンと出逢った場所というから、きっと思い出いっぱいの曲なのだろう。この後に続くのが<So Long My Friend>だから、もしかしてグレンの急死後に引っ張り出した?、なんて勘ぐってしまいたくなる。ラストのタイトル曲<One More Song>は、お察しの方も多いだろう、ランディ・マイズナーの2ndソロのタイトル曲になった あの曲だ。

実のところ、映画用に書いたとか、デモ段階で終わってる楽曲もあるようで、すべてが世に出たワケでは無さそう。それでもテンプチンの朴訥な、でも妙にあったかい歌声で歌われると、思わずホッコリしてしまう。エアコンとかヒーターというより、湯たんぽみたいな存在の作品かも。

ちなみに彼はグレンの訃報に接し、“2人で書いた曲は、これからは自分で歌い継いでいく” と語ったそうです。