nathan east 2
セッション・ベースの優等生、ネイザン・イーストの2ndソロが到着。14年に出た初リーダー作がキャリア40年を経ての作だったので、次作がこんなに早いのは意外だったが、どうやら前作に収めきれなかったマテリアルがあったようで。初めてジャケを見た時は、ネイザンもスピリチュアルな方向に進んだか、と思ったが、基本的な内容は前作の延長+拡大解釈だった。

ノッケはスムーズ・ジャズ・チャートの覇者らしく、最高級のスムーズ・ジャズ。オープニングがフィリップ・ベイリーをフィーチャーしてのアース・ウインド&ファイアー・カヴァー<Love's Holiday>で、続いてがトム・キーンとの共作<Lifecycle>。しかもドラムがリッキー・ローソン(13年没)だから、いきなり収め残しかよッ でも3曲目<Elevenate>は、現フォープレイの同僚チャック・ローブの提供で、曲調はパット・メセニー風のコンテンポラリー・ジャズ。チャックとポール・ジャクソンJr.、マイケル・トンプソンというクールなギター共演が聴きモノだが、前作ではモロ、メセニーの曲を演ってたなぁ…。

そして、今のE.W.& F.メンバー3人が参加しての<Serpentine Fire>。ネイザンとヴァーダイン・ホワイトのベース共演は、昨年9月のブルーノート・ジャズ・フェス(@横浜赤レンガ倉庫)でのマーカス・ミラー&ヴァーダインの顔合わせを思い出すが、実は同時に往年のエリック・クラプトン・バンドの再編も行われていて、ギター:クラプトン、ドラム:フィル・コリンズ、鍵盤:グレッグ・フィリンゲインズと、超豪華キャスティングになっている。BPMもグッと抑えてヘヴィなグルーヴを強調し、そこにE.W.& F.特有のホーン&コーラス隊が乗るテンコ盛りのアレンジ。これはネイザン&マーセルの編曲の勝利だろう。間違いなく、本作の白眉。

でもこの曲を皮切りに、この2作目の本領が露わになってくる。まずはゴスペル・ディーヴァ:ヨランダ・アダムスを迎えての<Feels Like Home>。先ごろノラ・ジョーンズが取り上げたランディ・ニューマンの楽曲だけど、これもリッキーが叩いているから、録音は結構前だろう。カーク・ウェイラムをフィーチャーしたスティーヴィー・ワンダーのカヴァー<Higher Ground>は、中休みのスムーズ・ジャズ・フォーマット。ネイザンはフォープレイで来日して日本で年を越したが、今回のフォープレイはチャックが病欠。そのトラがギタリストではなくカークだったのも、こういう伏線があったためだろう。元々カークは、ボブ・ジェームスのバックで頭角を現したのだし。

更にクインシー・ジョーンズが入れ込んでたカナダのジャズ歌手ニッキー・ヤノフスキーが歌う<The Mood I'm In>(ネイザン&トム・キーン共作)、愛息ノア(piano)との父子共演によるスタンダード<Over The Raibow>をシットリ聴かせ、<Shadow>と<Pasan>は再びコンテンポラリー・ジャズ仕様。後者での印象的なフルートは、ヒューバート・ロウズが吹いている。そして後半のハイライトは、ハワード・マクラリー(元マクラリーズ)が書いてルーベン・スタッダードが歌う<Why Not This Sunday>。これ、ネイザンがL.A.のスタジオ・シーンで名を広め始めた頃のアーリー80's的AOR〜ブラック・コンテンポラリー風のアーバン・ミッド・チューンで、カナザワ世代は無条件に反応してしまう。

そして実は、日本オンリーのボーナス2曲が、また美味で。ジャック・リー参加の<April>、ラストがハービー・ハンコックの名曲<Cantaloupe Island>のカヴァーなのだけど、どちらも金太郎飴的スムーズ・ジャズではなく、古き良き時代のフュージョン/クロスオヴァー・スタイル。聴き心地の良さにもシッカリと熱いミュージシャンシップが流れている。

フレキシブルで高度な順応性を有するが故に、ベース・プレイヤーとしては個性が薄いネイザン。例えばTOTOのツアーに同行した時など、変な話だけど、歴代メンバーのデヴィッド・ハンゲイトやマイク・ポーカロ以上にTOTOサウンドにフィットしていて、意外にもアグレッシヴだったリー・スクラーとは反対に刺激に乏しいと感じてしまった。でもネイザンの共演歴を見れば分かるように、彼ほどのオールラウンド・プレイヤーは存在しない。そうしたところで発揮してきたバランス感の集大成的作品が、このアルバムなのだ。メロディ楽器としてのベースが前に出るのは当然ながら、ベース奏者のリーダー作としてではなく、一人のミュージシャンとしての作品として接することをオススメしたい。