tito jackson
ジャクソン・ファミリー最後の男、次男ティト・ジャクソンの初アルバムがようやくリリース。06年にソロで初来日し、10年以降はレギュラー化しているので、ソロ作も遠くないと思っていたが、マイケル追悼イベントやらジャクソンズの再結成ツアーなどもあり、意外に時間が掛かった。齢63歳にしての初アルバムだが、若手クリエイターとのコラボを交え、それなりに「今」を感じさせる内容になっている。

そもそもティトは、どうして今までソロ活動に踏み出さなかったのか。6人の男兄弟の中で積極的に楽器を手にしていたのは、ギターのティトとベースのジャーメインだけ。しかもジャーメインはマイケルの向こうを張る人気シンガーでもあったから、ジャーメインが独立し、ジャクソン5からジャクソンズに衣替えして以降、ティトは自ずと他のメンバーをサポートする立場になった。ティト自身、自分はエンターテイナーではなく職人気質のミュージシャンで、みんなの後ろ盾となるのが天職、そう思っていたのだろう。自分のことより愛息たちを “3T” として先にデビューさせた時にも彼の心根が垣間見えたし、世界屈指の音楽ファミリーにあって「古き佳きを守る」、そういう立場にいたと思う。

でも自分でソロの看板を背負うとなれば、そうも言ってられないワケで。特にビッグ・ダディ・ケイン、ジョセリン・ブラウンなどをフィーチャーした冒頭3曲は、コンピュータ・サウンドを駆使したハウスやゴーゴー系のダンス・チューン。

ところがカナザワ的には、これがまったく面白くなかった。最新スタイルのようで微妙に古いというか、“もしかして録音は数年前?” という感覚。狙って創ったレトロ・スタイルではなく、型落ちの機材で無理して最新の音を作っている、そういうチープさがあった。特に最初はカー・オーディオで聴いたためか、ノッケで底の浅さが露呈した感があり、途中でCD替えようか、と思ったほど。

でもそれが、11年の配信シングル<We Made It>あたりから急激に変化してくる。この曲自体は4ツ打ちのファンキー・ナンバーだが、メロディが立っているのとアレンジに工夫の跡が見え、生楽器とプログラムのコンビネーション・バランスも絶妙。そしてこれを境に、一転メロディアスなミディアム〜スロウ系の連発に突入する。そのうえどれもティトの「古き佳き」を映し込んだトラックばかりで、楽曲もハイ・レヴェル。そして ほのかなカントリー・フレイヴァーなどを交えつつ、味わい深さを醸し出すのだ。

こうなると、3Tをフィーチャーしたビート・ナンバー<Jammer Street >も、モータウン風味でウキウキ気分を増幅。Rooのふわふわしたコーラスを生かした<Not Afraid>は、まさにアーバン・メロウなミディアムになった。またドープな音使いを交えたスロウ・チューン<Crusin'>では、マイアミのレジェンド・シンガー:ベティ・ライトが客演。ジャクソン家と古い付き合いがある故の参加らしいが、この曲にベティを呼ぶあたり、やっぱりティトは分かってますな。

なのに、アタマ3曲の迷走ぶりはいったい何なの? ティトぐらいのキャリア組でも、初ソロ作の重圧に自分らしさを見失ってしまうのか。これがマーク・ロンソンやブルーノ・マーズ、ファレル・ウィリアムス、タキシード(メイヤー・ホーソーン)らの動向を意識してのモノなのは確かだけど、その後の楽曲群がティトらしさ全開の勘どころを掴んだ好曲オン・パレードなだけに、時代の音への擦り寄りがホントに必要か?という思いが強くなる。もちろんこれが、ジャクソン・ファミリー最後の砦という矜持なのも理解しているつもりだが。

ちなみに日本盤ボーナス5曲のうち、2曲はティトと近しい西寺郷太(NONA REEVES)が参加。オープナー<Get It Baby>を、オリジナル以上にファレル<Happy>を意識したリミックスに仕上げている。どうせ狙うなら、ココまでのツッコミが必要だったかも。