azymuth_fenix
ブラジルの人気ジャズ・フュージョン・グループ:アジムスの新作が届いた。グループとしてのデビューは75年だが、メンバーはそれぞれセッション・ミュージシャンとして働いていて、70年初めから一緒にプレイ。73年からアジムスと名乗るようになった。日本では77年の2作目『涼風』収録の<Voo Sobre O Horizonte>が、名物ラジオ番組『クロスオーヴァー・イレヴン』のエンディング・テーマに使われ、広く知られるようになっている。

この『FENIX』は、中心人物J.R.ベルトラミ(kyd)が12年に他界して以来、初めてのオリジナル・アルバム。残された2人もイイ歳だから、そのまま自然消滅したものと思っていたが、彼らはシッカリ後釜を入れて戻って来た。まさに“フェニックス”。ただベルトラミは、80年代後半にもアジムスを離れた時期があったから、他のメンバーも意外に喪失感は大きくなかったのかもしれない。それでも90年末にベルトラミが復帰後は、クラブ系リスナーの支持を得てコンスタントに作品リリース。彼の没後のブランクは、活動停止を疑わせるには充分の長さだった。

新加入の鍵盤奏者キコ・コンティネンティーノについての詳細は、現時点でほとんど不明。これまでにミルトン・ナシメントやジルベルト・ジル、ジャヴァンらとプレイしてきたそうで、全10曲(リピート入れて11きょく)中、自作3曲/共作1曲を提供している。さすがにエレキ・ピアノの音色にはベルトラミほどの透明度はないものの、他の鍵盤プレイにはチョッとしたヴィンテージ感があり、なかなかテイスティ。これなら、アジムスの看板維持には何の障害もなさそうだ。

振り返ってみれば、ベルトラミ復帰と時を同じくしてスタートしたFar Out Recordingsとの付き合いも、既に20年。当然 両者の間には絶大な信頼関係があるだろうし、英国や欧州での人気クラブ・スタイルとも無理なく渡り合っている。アジムスらしさを貫きつつ、毎作、ちょっとしたトライにも挑んできた。今回はそれが否応なしのメンバー交代とダイレクトに繋がって、クールさの中にも体感温度が2〜3度上がった印象。

そりゃー『クロスオーヴァー・イレヴン』の頃とは違うだろうけどさ、20年もやってりゃ変わるのが当たり前で。そうした意味でアジムスは、偶然・必然も含め、イイ塩梅で歴史を刻んでいると思うです。