jeff beck_rough ready
第2期ジェフ・ベック・グループの1stアルバム『ROUGH AND READY』(71年)の、SA-CDマルチ・ハイブリッド・エディションが発売。ソニー・ミュージック・ジャパン独自企画で当時の4ch仕様クアドラフォニック・ミックスをマルチ化してきたこのシリーズも、これで第2期JBG〜BBA〜『BLOW BY BLOW』『WIRED』までの5作(BBAライヴはナシ)が出揃い、ここに完結となった。
当時のクアドラフォニック・ミックス最後のリリースだった『WIRED』は、もう先が見えていたからか、ある意味乱暴、ある意味過激なまでの冒険的ミックス。徹頭徹尾ギターがメインのミキシングで、ヤン・ハマーのシンセがリードを弾いているのに、それが遠くの方で微かに鳴っているだけで、バッキングのギターの方がデカイ、なんて場面もあった。だからオリジナルを聴きこんでいると滅法面白いが、そのミックスで初めて『WIRED』を聴く人がいると思うと、ちょっと困ったことになるかも、なんて老婆心が働いた。

でもこの『ROUGH AND READY』は左にあらず。4chミックスだから当然空間が広がり、各楽器の表情がクッキリ浮かび上がる。派手にやらかすコージー・パウエルのドラムは、元々が少ないチャンネルにまとめられていたのだろう、多少聴きやすくなった程度だが、ジェフのギターがこれほど何本も重ねられているとは思わなかった。このシリーズの特徴として、当時のアルバムに採用されなかった別ミックスのプレイが顔を出したりするが、今までオフ気味だったフレーズが耳に届きやすくなり、“へぇ、こんあコトを演ってたのか” という発見が随所に。マックス・ミドルトンのエレキ・ピアノの揺らぎ感、クライヴ・チェアマンのベースの表情の豊かさなど、格段に情報量が多くなっている。ハイブリッド仕様なので普通のCDプレイヤーでも再生可能だが、5.1chで聴けば、やはり面白さが倍増する。

89年作『GUITAR SHOP』以降、ギター求道者みたいな作品が多くなって、トータル・サウンドを楽しみたいカナザワとしては、今イチ夢中になれないジェフ。けれどこの頃の作品は、バンド作品として相当にユニーク。メンバーの2/5が黒人で、1/5がロック経験に乏しいジャズ出身者。そんなクロスオーヴァーしたロック・バンドは、70年代初頭の英国シーンにはいなかった。当時のジェフの面白さは、ギター・プレイよりも、彼の音楽が向かう方向性にこそ、その核心があったと思う。