cretones
80年前後のカリフォルニア〜L.A.を、ニュー・ウェイヴ色豊かなロックン・ロールで染め上げた男、マーク・ゴールデンバーグ。そのマークが率いた4人組ザ・クリトーンズの1stアルバムが、遅かりし初CD化となった。当時の国内盤の邦題は、『激愛そしてモダン・ロマンス』。もちろんリンダ・ロンシュタットの80年作『MAD LOVE(激愛)』にちなんでのモノで、典型的なカリフォルニアの歌姫だった彼女をマークが過激に変身させた、と話題になったのである。

クリトーンズのメンバーは、ギターのマークとピーター・バーンスタイン(b)、スティーヴ・レオナード(kyd)、スティーヴ・ビアーズ(ds)。もっともキャリアが長くプロデューサーも兼任しているピーターが、カーラ・ボノフや故アンドリュー・ゴールド、ウェンディ・ウォルドマン、故ケニー・エドワーズが組んだブリンドルに絡んでいた関係でリンダをサポートするようになり、ウェンディのソロ活動にも協力した。その時ウェンディのバック・バンドに集まってきたのが、エディ・ボーイ・バンドというカントリー・ロック系のバンドにいたマークだった。

音はカーズやナックあたりに通じるニュー・ウェイヴ風味のパワー・ポップ。リンダがカヴァーしたエルヴィス・コステロの影響も垣間見える。ただそこに、カリフォルニアらしい乾いた空気感と甘酸っぱい郷愁を忍ばせているのがミソ。ソリッドなギター・ワークと独創的なキーボード・サウンドが真っ先に耳をくすぐるが、その向こうに見えるのは荒んだ裏通りではなく、パームトゥリーに挟まれたダウンタウン郊外のフリーウェイだったりするのだ。チープなオルガンの使い方はまさにパンキッシュだが、鍵盤のスティーヴ・レオナードはコンピュータ・ミュージックの得意とする頭脳派だったらしい。

収録曲はすべてマークの作で、<I Can't Wait>がアンドリュー・ゴールドとの、<Way Of The Heart>がピーターとの共作。<Mad Love>と狂おしさが募る名曲<Justin>は、ひと足早くリンダに取り上げられ、クリトーンズ・デビューの伏線となった。そしてこの新機軸は、そのままアンドリュー・ゴールド『WHIRLWIND(風にくちづけ)』に繋がっていく。

2枚のアルバムを出したクリトーンズの解散後は、ジャクソン・ブラウンのバンドで活躍したり、イージー・リスニング風味の無国籍ポップ・インストゥルメンタル作品をクリエイトしたマーク。だけどこの時は、彼自身が間違いなく whirlwind(旋風、つむじ風)だった。

偶然だけど、つい先日、某所で今年の再発モノに関してミーティングしている時に、クリトーンズの初CD化ってアリだよね?なんて話していたら、実は去年の末に出ていたよ…