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昨日発表された第59回グラミー賞。主要4部門のうち新人賞を除く3部門、すなわち最優秀レコード賞、最優秀アルバム賞、最優秀楽曲賞を、アデルの『25』及び<Hello>が独占した。彼女は他にも最優秀ポップ・ソロ・パフォーマンス、最優秀ポップ・ヴォーカル・アルバムを獲得し、計5冠。9部門ノミネートのビヨンセは、「最優秀アルバム賞を獲るのでは?」という下馬評が高かったが、結局、最優秀アーバン・コンテンポラリー・アルバムなど2冠にとどまった。

この結果に対して、メディアでは “グラミーは白人至上主義”、“投票権を持つのは年寄りばかり” などと批判が渦巻いた。何よりウィナーであるアデル自身がビヨンセ信奉者で、「この賞は受け取れないわ。ビヨンセが獲るべきよ」なんて発言したものだから、口うるさい批評家はすぐに激しく罵声を浴びせたワケだ。でも主要部門の一角である新人賞に選ばれたのは、ストリーミングでしか楽曲リリースしていないチャンス・ザ・ラッパーである。メディアの言い分がまったく正しくないのは、最初から明白だ。

確かに今度のビヨンセの新作はいつになくメッセージ色が濃く、従来のようなダンス・ポップ作ではない分、グラミー受けしそうな作品だった。でも自分は漠然と、“アデル独占だろうなぁ” という予感を持っていた。何故ならアデル『25』は、アルバム・セールスがもうダントツだからである。

昨年末に発表されたビルボード誌の2016年全米アルバム売上ベスト3(CD、アナログ盤のセールス、有料アルバム・ダウンロードの総合計/定額制音楽ストリーミングは対象外)は、1位がアデル、2位がドレイク 、3位にビヨンセ。アデルは昨年実績で170万枚超を売り上げたそうだが、実はこの『25』は15年11月の発売で、一昨年分だけで既に750万枚近くを売り捌いていたそうだ。つまり発売からの合計売上は900万枚。これにストリーミングの見なし売上を足すと、1,000万枚を超えるというから恐れ入る。それを考えると昨年3位のビヨンセは、イイとこ150万枚くらいかな。グラミーはセールス実績で決まるワケではないけれど、アデルにはそれだけのアドヴァンテージがあったから、主要3部門獲得も当然と思えたのである。

ただし、ここ日本では、アデルがあまり支持されないのも分かる。海外では20〜40歳代の母親世代に支持が高いというが、それはやはり歌詞にシンパシーを抱かれるからだろう。少しトゥ・マッチな表現力も、日本人の感性にはそぐわない。その辺が理解されにくいから、日本では余計にビヨンセへの期待感が高まったのかもしれないな。

ちなみに最優秀コンテンポラリー・ブルース・アルバム賞は、ギタリストのマサ小浜が全面参加しているファンタスティック・ネグリートの『THE LAST DAYS OF OAKLAND』が受賞。これはとても素晴らしいコトだけど、メディアによっては “日本人ギタリストのマサ小浜が受賞” みたいな伝え方になっていて、ちょっと憤慨…。まったく、自分たちの都合の良いように、勝手に事実を歪曲させるなよ

個人的には、急逝したデヴィッド・ボウイがアデルと同じ5冠(最優秀ロック・パフォーマンス、最優秀ロック楽曲、最優秀オルタナティヴ・ミュージック・アルバムほか)に輝いたこと、日本で驚異的ライヴ・パフォーマンスを披露したジェイコブ・コリアーも2部門を獲ったのが嬉しかった。

パフォーマンスはダイジェストをチラ見した程度だけど、双子妊娠中の大きなお腹で歌ったビヨンセ、プリンス・トリビュートで当人のギターを弾きまくったブルーノ・マーズ、鬼籍に入った人たちを讃えるメモリアル・コーナーを挟んでのジョン・レジェンド<God Only Knows>(with アリシア・エルヴォ)が印象に残った。