kamayatsu
ムッシュこと かまやつひろしが3月1日、膵癌で逝った。享年78歳。癌の公表時には「絶対復活するから心配しないでください!」とコメント。去年10月には一度退院し、従姉妹である森山良子宅に身を寄せて通院しながら、ザ・スパイダーズ時代の盟友:堺正章の70歳記念ライヴにゲスト出演し、1曲デュエットした。それが公での最後の姿。

自分はムッシュに直接お会いしてインタビューする機会などは持てなかったが、旧友K氏の最初の結婚パーティー3次会が今はなき六本木ピットインで行われた時、ムッシュも来ていて、ポンタさんや青木(智仁)さんをバックにちょっと歌った。あの時ひと言ふた言コトバを交わした記憶があるが、何を話したのかは全然覚えていない。その後、ブルーノートあたりで何度かお姿拝見。誰のライヴかは忘れたが、「へぇ、ムッシュってこんなの聴くんだ」と思った印象がある。そうした既成概念に捉われない、本当の粋人だった。

世間一般には、吉田拓郎が提供して大ヒットした<我が良き友よ>が有名。音楽フリーク的にそそられるのは、タワー・オブ・パワー参加のカップリング曲<ゴロワーズを吸ったことがあるかい>がレア・グルーヴ調でしばしば話題になる。でもライトメロウ的には、77年からスタートしたトリオ時代が「ヤバイぞ!」と。アルバムでは78年のL.A.録音盤『WALK AGAIN』と、ハワイで制作したトロピカル・メロウな『パイナップルの彼方へ』(79年)。そして、その前哨戦となったトリオでの初シングルが、上掲<サテンドレスのセブンティーン>と<サマーラヴ・アゲイン>というメロウなカップリングだった。共に作曲はムッシュ自身ながら、まだ実績の乏しかった若き日の林哲司が編曲/サウンド・プロデュースを担当。なるほど納得の都会派サウンドに仕上げている。後者は翌年、新アレンジで『パイナップルの彼方へ』に収録されたが、より美味なのはコチラ。説監修による7インチ再発シリーズ Light Mellow和モノ45 の第1期にラインナップされているので、在庫があるうちに追悼兼ねてのチェキを(発売はディスクユニオンから)。

そして今月から CLINCK RECORDさんとのコラボでリ・スタートした Light Mellow和モノ45 の第2期では、急遽4〜5月にムッシュの追悼リリースが決定。まずは『WALK AGAIN』から<W. 4th st./レイニー・サタディ・ナイト>のカップリング・シングルを切ることになった。詳細はCLINCK RECORDSの特設ページへ。

ソロでは<我が良き友よ>以外は大きなヒットに恵まれなかったが、いわば顔役として日本のポップス・シーンに存在感を発揮したムッシュ。そしてその訃報を追うように、感動秘話が入ってきた。実はムッシュが旅立つホンの数日前の2月末、奥様がガンで先に亡くなっていたのだ。病気が明らかになったのは奥様の方が早く、ムッシュはずっと献身的に介護していたそう。その過程でムッシュ自身にも膵癌が発症。今年2月になって急速に容態が悪化する中、おしどり夫婦と言われた奥様がひと足先に旅立った。その事実は家族の判断によりムッシュには知らされなかったそうだ。でもきっとムッシュは、奥様の死を悟っていたんじゃないだろうか。そして奥様には、三途の川を渡ってくる旦那さまを迎える準備の時間が必要だった。

本当に、さだまさし<関白宣言>を地でいくようなこのお話。理想の夫婦とは、きっとこの2人のことを言うのだろう。思わず自分の家庭を省みて、「今のままでいいのか!?」と思ってしまうな…。

Rest in Peace...