idlewild south
昨日8日に発売になった、ビクター・ビンテージ・ロック〜日本のロック名作選〜。まずはカナザワが解説を書かせて戴いたアルバムから、順次紹介していこう。最初のピックアップは、山下達郎も絶賛する日本一のスライド・ギタリスト:松浦善博 率いるアイドルワイルド・サウス、唯一のアルバム(76年)。

グループ名を聞いただけで分かる人には分かるように、この6人組は和製サザン・ロックを目指したグループ。バンド名はオールマン・ブラザーズ・バンドの傑作2ndのタイトルを、そのまま持ってきたものだ。“日本のグレイトフル・デッド” と呼ばれた北陸出身の めんたんぴん、その弟分の越中屋バンド(デビュー時にT-Birdと改名)に続くグループとして注目されたが、アイドルワイルド・サウス自体の結成の地は神戸である。しかしデビュー前の松浦が、めんたんぴんのローディとして働いた時期があり、近しい間柄になった。

しかも編成がダブル・ドラムにツイン・ギター、そしてベースにキーボードという、サザン・マナーをシッカリ受け継いだフォーメーション。kydは後に桑名正博&ザ・ティアドロップス、一時はT-スクエアに参加したこともあった難波正司が弾いていた。またレコーディングでは、めんたんぴんのギタリスト池田洋一郎がプロデューサーを務め、ゲストには元メンバーで当時ソー・バッド・レビューに参加していたチャールズ清水(kyd)と、“国内屈指のテックス・メックス・ロック・バンド” と言われたオレンジ・カウンティ・ブラザーズの谷口邦夫がペダル・スティールで。サンクス欄に村上ポンタ秀一の名があるのは、録音前からドラムの音決めに四苦八苦したため、伝手のあったポンタ氏にドラム・テックとして協力を仰いだからという。

かくして出来上がったサウンドは、オールマン直系の、泥臭くも熱いサザン・ロック。ただし、ただブルージーなだけではなく、案外ポップなところも持ち合わせていて、楽曲によってはセンチメンタル・シティ・ロマンスを髣髴させる爽快な西海岸テイストや素朴なカントリー色をも漂わせた。だから作品トータルの印象は、オールマンズの『IDLEWILD SOUTH』というより『BROTHERS AND SISTERS』(73年)に近い。そしてアルバム発売後は、レイナード・スキナードの来日公演でフロントアクトを勤め、メンバーたちと親交を深めていく。「次作はレイナードのプロデュースで…」なんて野望も生まれる中、しかしバンドは突如解散。レイナードも来日から10ヶ月後、ツアー専用機の墜落事故で活動にピリオドを打ってしまった(後に再結成)。

その後松浦は、アン・ルイスのサポートを経て、人気絶頂のツイストに加入。初シングル<SOPPO>の爆音スライドが、未だに記憶に焼き付いている人も多いだろう。一時はレコード会社勤務で制作担当。またプロデューサー/ギタリストとして、大江千里やダイヤモンド・ユカイ、宇崎竜童、奥田民生、コブクロらに関与したことがある。達郎氏との絡みでは、竹内まりやや村田和人のアルバムに参加。“小さな巨人”とも言われる豪快なスライド・ギターを披露している。今も忘れがたい、職人肌のギタリストだ。