mitsuru satoh
昨日に引き続き、ビクター・ビンテージ・ロック〜日本のロック名作選〜から、カナザワの解説担当モノをもう1枚。これは四人囃子の2代目ギタリスト/ヴォーカリストを務めた佐藤ミツルの、ワン&オンリーのソロ・アルバム。四人囃子の最終作『NEO-N』から約3年、82年3月に発売された。今回が待望の初CD化である。

前任の森園勝敏とは違って、キッチリ構築したテクニカルなギター・プレイを得意とし、ヴォーカルも鼻に掛かったやや甘い歌声。何より佐藤加入後の新生・四人囃子は、『PRINTED JELLY』(77年)、『包(bao)』(78年)といった作品で、よりストレートなポップ・ロック・サウンドを打ち出し、森園時代のプログレ色を期待した向きを戸惑わせた。でもメンバーの考えは、“エポックメイキングな実験的ポップスこそプログレの真髄” というもので、そのまま臆することなく、テクノやニュー・ウェイヴにも大胆に呼応していく。後の売れっ子プロデューサー:佐久間正英を育んだのも、そうした自由な環境があったればこそだ。

その四人囃子解散後、佐藤は同郷のフォーク・デュオ:ふきのとうのバックや、長沢ヒロ(安全バンド)率いるヒーローのサポートなどを行ない、満を持して本作を制作した。まさに『BLOOMING ALONE』。ちなみにこのヒーローのメンバーには、佐藤が四人囃子参加前に札幌で組んでいたマーシャン・ロード出身の牧野哲人(g)と中島幸雄(key)が参加。また、笹路正徳や土方隆行(共に元マライア)らが結成した新バンド:NAZCA(ナスカ)の坂井紀男(b)も、同グループ出身だだった。

アルバムのサウンド・プロデュース/アレンジは、佐藤と佐久間という元・四人囃子組。佐久間は12曲中8曲を書き(残りは佐藤自身の作)、ベースやシンセでほぼ全曲に参加した。他にも森園、岡井大二(ds)ら元メンバー、プリズムの渡辺健(b)、青山純(ds)、佐山雅弘(kyd)、中村晢(sax)、マライアのリズム隊:山木秀夫&渡辺モリオ、佐野元春&ザ・ハートランドのボトムを固めた古田たかし&小野田清文、それに難波弘之(kyd)など、錚々たる顔ぶれがクレジット。コーラスにはふきのとうの細坪基佳、紫〜コンディション・グリーンでドラマー/シンガーを務めた宮永英一などの名がある。

作品の元々の構想は、スペース・サーカスや原田真二&クライシスでキーボード/ヴァイオリンを弾いていた豊田貴志とのコラボレイトにあったそう。その後構想が膨らみ、小説出版、TVドラマ制作も視野に入れる内容となった。何やらサントラ風の仕上がりなのは、その名残りらしい。四人囃子時代のイメージを踏襲した楽曲、クイーンやディープ・パープル、ピンク・フロイドなど、70年代のプログレやブリティッシュ・ハード・ロック勢の影響が覗く場面も多々。

少し前に『四人囃子アンソロジー〜錯〜』が発表され、その歩みを反芻している今、そこに大きな貢献を果たした佐藤ミツル 唯一のリーダー作を聴くには、まさに絶好のタイミングなのではないかな。