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バタバタしてる間に、発売日を迎えてしまいました! P-VINEで展開中の拙監修シリーズ: Light Mellow Searches で、前作『KNIGHT GAMES』から国内リリースしているフレンチAOR/マルチ・クリエイター:ガイスター。その最新作『WITH ALL DUE RESPECT』が、何と本国フランスでの発売に先駆けて日本先行リリースです

元々ガイスターは、フランスの若手ポップ・クリエイターのガエル・ベンヤミンと女性シンガーのデュオ・ユニットとして03年にスタート。が、女性シンガーがいつしか流動的になり、気がつけばガエルのソロ・プロジェクトとして定着していた。しかもガエルは並行してレーベル運営に携わり、シンガー・ソングライター、プロデューサー、エンジニア、グラフィック・デザイナー、プロモーターを兼任。忙しさと引き換えに創作の自由を手に入れる。日本では1枚モノとして登場した前作『KNIGHT GAMES』だが、オリジナルは『KNIGHT GAMES I, II,III』という3枚同時発売の3部作。しかも今回の新作『WITH ALL DUE RESPECT 』の収録曲のいくつかは、この『KNIGHT GAMES』制作時に書かれた楽曲で、現在アルバムほぼ2枚分が既に完成しているという。それだけ並々ならぬ創作意欲と湧き出るアイディアを持っているのが、ガエル・ベンヤミンという男なのだ!

ライナーではガエルにメール・インタビューし、その答えを反映。「10曲の収録曲はどれも、ヴァース、サビ、ブリッジを持った典型的ポップ・ソングで、僕の1stアルバム『I LOVE 1984』を想起させるようなディスコ・テイストとフレンチ風味を感じられるサウンドに仕上げた」と語っている。そして「今回は、収録曲のほぼすべてがサックスやシンセ、フェンダー・ローズのソロによるジャズ・ファンク調のアドリブで終わる」とも。宇宙的なアートワークは、ハービー・ハンコックの74年作『THRUST(突撃)』がモチーフ。その中央に、アコースティック・ギターを抱えたガエル自身を置くことで、シンガー・ソングライターの作品であることをアピールした。

音楽ファンに印象深いのは、プリファブ・スプラウトの名盤『STEVE McQUEEN』(85年)から、<When Love Breaks Down>をカヴァーしていることだろう。
「大ファンなんだよ。彼らは、僕が音楽を学んでいる成長過程に絶大な影響を及ぼした。彼らの曲には、ある種の単純さと確かさがある。シンプルなメロディとキャッチーなフックがね。でも、聞こえる音の背後には、究極の洗練とパディ・マクアルーンのピュアな天才ぶりが隠れているんだ!」」

パリでは積極的なライヴ活動を行っていて、「いつか日本に来たい」とガエル。その才に注目している宅録系ポップ・クリエイターは、日本でも意外に多いんじゃないだろうか。若干AOR色は稀薄な最新作だけれど、ジャズ・ファンクという観点では、より注目度が高くなりそうな一枚である。