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先月から発売元を Clinck Records に変更してリリースを再開した【Light Mellow 和モノ 45】。この往年の名盤や隠れた好盤から今の感性で7インチ・シングルを切っていく大胆なシリーズだが、その最初は 今はなきトリオ・レコードにスポットを当てていく。宮本典子『シルバー・レイン』に続いたのは、29日に発売された酒井俊『I LOVE TALKIN' 'BOUT BABY』だ。

酒井俊は知る人ぞ知る実力派のジャズ・シンガー。77年にデビューして当時のジャズ・シーンに衝撃を与えたが、すぐに持ち前のソウルフルなヴォーカル、奔放なセンスの良さを発揮し、2作目『LOVE SONG』ではキャロル・キングやダニー・ハザウェイをカヴァーしてクロスオーヴァー志向を見せた。そして79年の3作目『MY IMAGINATION』では、坂本龍一、高橋幸宏、小原礼、鈴木茂、松原正樹ら、国内屈指の豪華ミュージシャンを招集し、シティ派路線を推進。拙監修のディスクガイド『Light Mellow 和モノ Special』でも、この3作目をピックアップして紹介している。

そして今回、そこからシングルを切ることになったのが、アルバム冒頭を飾ったこの<I Love Talkin' 'Bout Baby>だ。元々は、モータウンのプロデューサーでソウル・シンガーとしても実績のあるジョニー・ブリストルが歌ったジェントル・チューン。それを坂本龍一がテクノ・ファンクしたツー・ステップ・スタイルに過激アダプトした。これはまさにジャズとソウルと黎明テクノが三つ巴になった、一期一会のクロスポイント。カップリング<Sentimental Journey>も、おなじみのジャズ・スタンダードをラヴァーズ・ロック風にリメイクしている。かのカクトウギ・セッション、そして渡辺香津美のKYLYNとほぼ同時期というタイミングを考えると、教授にとってはなかなか重要なトライアルになった作品と考えて良いだろう。

両曲ともアナログ・マスターテープからのダイレクト・カッティングで、初のシングル・カット。ちなみにこの Light Mellow 和モノと CLINCK RECORDS による7インチ・コラボ、このあとは亡くなった かまやつひろし追悼で、彼のトリオ時代の楽曲のシングル化を目論んでいるので、お楽しみに。

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