lesley gore_love me
15年2月に68歳で亡くなった60'sの人気ポップス・シンガー、レスリー・ゴーア。彼女が久々にクインシー・ジョーンズ制作でリリースした76年の好作が、ようやくCD化された。元々クインシーに見出されたレスリーは、63年に16歳でデビューすると、すぐさま<涙のバースデイ・パー ティ(It's My Party)>が全米No.1ヒットとなり、ポップ・アイドルとして人気沸騰。その後もシンガー・ソングライター、女優、そして活動家としても名を馳せた。しばしのブランクを挟んで、モータウン傘下のMowestから72年に『SOMEPLACE ELSE NOW』を発表。キャロル・キング的佇まいで、レディーになった姿をアピールした(CD化時のレビュー)

おそらく、その復帰作がセールス的に厳しかったためだろう。あるいは、Mowestがすぐに閉鎖された所為でもあるかもしれない。いずれにせよレスリーは、再び3〜4年のブランクを経てA&Mへ移籍。再度、育ての親であるクインシーと手を組み、表舞台へのカムバックを試みたのが、この『LOVE ME BY NAME』である。

プロダクト的には、当然の如く大きなバジェットが掛けられたよう。参加ミュージシャンにもハービー・ハンコック/デイヴ・グルーシン/クレア・フィッシャー/デヴィッド・ペイチ(kyd)、ラリー・カールトン/リー・リトナー(g)、ルイス・ジョンソン/デヴィッド・ハンゲイト(b)、ハービー・メイスン/ジム・ケルトナー/ジェフ・ポーカロ(ds)、トム・スコット(sax)、トゥーツ・シールマンス(harmonica)、ラルフ・マクドナルド(perc)等など、錚々たる顔ぶれが並んでいる。

オープニングの<Sometimes>はブラザーズ・ジョンソンをフィーチャーしたダンス・チューンで、案の定ルイスのスラップが炸裂。ハンコックを迎えてのタイトル曲は、後にダスティ・スプリングフィールドが歌ったスロウ・チューンで、クインシー自身が78年作『STUFF LIKE THAT』でカヴァーした。そこでリード・ヴォーカルを取ったパティ・オースティンも、自らのライヴでレパートリーにしている(79年作『LIVE AT THE BPTTOM LINE』所収)。トゥーツの艶やかなハーモニカは、コーラスも涼やかなシティ・ソウル・チューン<Along Teh Way>で披露。アルバムからの先行シングル<Immortality>、<Give It To Me, Sweet Thing>のヴァージョン違いをボーナス収録してあるのも、熱心なファンにはお楽しみだろう。

76年制作なので、まだソフィスティケーションはそれほど進んでいないものの、プレAOR的ニュアンスのポップ・アルバムとして魅力充分。同時期のクインシー・ワークス、『MELLOW MADNESS』やブラ・ジョン1st あたりと一緒に聴くのが、正しい楽しみ方と言えるかな?