hiroshi sato_evening
約90分という時間的制約のため、明日のイベントの選曲から溢れてしまったアナログ盤を1枚、コチラでご紹介しておきたい。それは先月、タワーレコード、HMV、ネットのSony Music Shop限定で発売された、佐藤博のアナログ12inchシングル『EVENING SHADOWS』である。

元々は、CBS/SONY(当時)が立ち上げた好企画《SOUND IMAGE SERIES》で83年にリリースされた『SEASIDE LOVERS (シーサイド・ラヴァーズ)』に収録された佐藤博のオリジナル・アルバム未収曲3曲<Evening Shadows>、<"X's And O's>、 <Sun Bathing>をピックアップし、12インチ盤にカット。そこに佐藤が音楽を担当したアニメ映画『七都市物語』のエンディング・テーマ曲<ordinary>(ヴォーカルはCANDEE)を追加して、アナログ化したものだ。

このオリジナル盤『SEASIDE LOVERS 』には、佐藤の他に井上鑑、松任谷正隆という巨匠サウンド・クリエイターたちが作品を寄せ合っていて、ビーチ・ハウスを舞台にした架空のイメージ・ラヴ・ストーリーのサウンドトラックという様相で制作された。ずいぶん前にCD化されたが、近年はすっかり入手困難となり、2012年の佐藤急逝もあってか、中古価格が高騰。13年夏に待望のCD復刻が叶ったものの、近年のアナログ人気のせいか、中古レコードの高値は収まらなかった。今回のアナログ・シングルのリリースは、その主要因がバレアリック&アーバンな佐藤ナンバーにあったということだろう。

この3曲、今 剛(g)、林立夫(ds)という盟友たちの参加はあるものの、ほとんどの演奏はキーボード&シンセサイザー、ドラム・マシーン、サンプラーなど、佐藤自身のプレイ(programmingで浦田恵司が参加)による。前年発表の超名盤『awakening』では Linn Drumでリズム・メイクを行なっていたが、ココではLinn Drumに加えてローランド TR-808(通称ヤオヤ)を併用。ノリの良い楽曲が増えたのは、そういうテクノロジーの進化・導入が背景にあったのかもしれない。この時期、最新器材を試したいがために打ち込みサウンドに擦り寄るミュージシャンが少なくなかったが、米西海岸での武者修行中に Linn Drumに触れ、“オレの時代がきた!” とほくそ笑んで帰国を決めた宅録マニア:佐藤には、自分の音楽性がテクノロジーに侵食される恐れはまったくなかった。

<ordinary>はサントラ曲らしい、歌い上げ系のハートフルなバラード。早生した実力派シンガー:Candee のヴォーカルが、また素晴らしい。ふと気づけば、佐藤さんが亡くなって、もう5年なのだなぁ…。

タワーレコード『EVENING SHADOWS』特設ページ