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マイケル・ボルトンのニュー・アルバムが2月に出ていたとは、不覚にもまったく知らなかった。原盤はイタリアのベテラン再生レーベル:Frontier。日本では、前作に当たるモータウンのカヴァー集『AIN'T NO MOUNTAIN HIGH ENOUGH』(14年)で国内リリースを見送られ、今回はインディ配給。しかも、この手のAOR系には縁の薄いトコロで、果たしてファンに情報が行き渡っているのかどうか…。自分の目に届かなかっただけなら良いが、内容がそれなりに充実しているだけに、少々心配になる。

中身はタイトル通り、映画のテーマ曲を取り上げたカヴァー集。先のモータウン・カヴァーに留まらず、ソウル・クラシックやジャズ・スタンダード、シナトラ楽曲集などを続々リリースしてきた人だから、コンセプトが分かれば自ずと音は推察できる。やや濃い口のブルー・アイド・ソウル・シンガーぶりは、日本のポップス・ファンには少々トゥ・マッチ気味だけど、アチラでは立派なセックス・シンボル。全盛期のライヴでは、ステージにブラジャーやパンティが投げ込まれて山になるほど、熱狂的な女性ファンを多く抱えていた。

このアルバムも、ぶっちゃけ、素材が映画音楽になっただけ。もっと言うと、サントラ曲をテーマにしたというより、取り上げたいソウルやポップ・クラシックスの中から、サブ・テーマとして映画関連の楽曲を選りすぐったニュアンス。ボルトン自身 再録音となるパーシー・スレッジ<When A Man Loves A Woman>を始め、ベン・E ・キング<Stand By Me>、マーヴィン・ゲイやグラディス・ナイトでお馴染み<I Heard It Through The Grapevine(悲しいうわさ)>、レオン・ラッセル作でカーペンターズが有名にした<A Song For You>(日本盤ボーナス曲)などは、言わば後付けサントラ曲なので、映画のテーマ曲というイメージはほとんどない。レイ・チャールズ<I've Got a Woman>なんて、レイの伝記映画『RAY』から、というんだから、ちょっと反則というか、こじつけ過ぎでしょ

でも逆説的には、それだけボルトン流儀を貫いた選曲が為されたワケで、それが安心して聴ける理由でも。個人的に耳に残ったのは、ホイットニー・ヒューストンがブレイクさせた<I Will Always Love You>。あのゆったりした叙情性、ドラマチックな展開をそのまま残し、フレイヴァーは原曲のカントリー・バラードに戻している。オマケにそこでデュエットしているのが、この曲を書いたドリー・パートン本人。これにはチョッと感動したね。

また、ゆるーいボッサにアレンジした<Somewhere Over The Rainbow>も秀逸。トム・クルーズの映画に使われたというボブ・シーガー<OldTime Rock And Roll>のチョイスには、軽く意表を突かれたな。