tatsuro performance 2017
待望の山下達郎のツアー PERFORMANCE 2017 @大宮ソニックシティ2日目を観た。ラッキーなことに近年はワン・ツアーで2〜3度観ることができていたけれど、回を追うごとにチケット確保が難しくなり、今度のツアーは今回の一発必勝?。もっとも達郎氏のパフォーマンスは、ツアーごとに大きく変わるモノではないし、セットリストとか達郎さん及びバンドのコンディションさえ確認できれば、という思いはある。でも、そうと分かっていても何度でも観たくなる、それが彼のライヴのスゴイところ。しかもこの大宮2daysは、長いツアーの折り返し地点。オマケにこの日はちょっとしたアクシデントがあり、思わぬ形で尖っていた頃の達郎氏の姿を垣間見ることになった。演っている音楽はジェントルでも、心根は頑固一徹のロックン・ロール・オヤジ。なおかつ完膚なきまでに自分の美学を追い求める。それが瞬間 露わになった、ちょっと貴重な一夜になった。
(以下 ネタバレあり)

今回のステージは、ライヴ活動を再開してからステージにかけた約80曲の中から、定番曲に加えて、自分の好きな曲を選んだ、というもの。洋楽カヴァーやアカペラ・コーナーのセレクトは、達郎ファンにはかなりベタに映るが、これは前回ツアーで歌ったフランキー・ヴァリ<君の瞳に恋してる>が異常なウケ方をしたので、「やはり分かりやすい曲の方がイイのだな」という判断に拠るものらしい。

また<The War Song>や<蒼氓>といった曲が選ばれたのも、彼なりのメッセージといえる。政治や社会情勢を赤裸々に攻撃することを潔しとせず、「ミュージシャンは音楽でモノを言う」「僕の仕事は皆さんの生活に潤いを与えること」とする氏のスタンスは、自分も大いに納得できる。具体的な主義・主張を叫ぶのではなく、世間に向けて危機感を呼び覚まし、自分で考えることを喚起できれば、そこから先は人それぞれではないか。

アクシデントが発生したのは、<潮騒>が終わった直後。2階席にやたらと賑やかな輩がいて、MCに合いの手を入れたり、妙な場面で拍手したり…。最初は氏もいつものパターンで、適度にイジりつつかわしていたが、<潮騒>のイントロでの要らん拍手にイラッときたか、曲終わりで「普段はこんなコト言わないんですが…」と前置きし、「アナタ一人のライヴじゃないんだから。2500人のお客さんが、アナタ一人のためにイヤな思いをする。ライヴが台無しになる」と発言。歌っていても気がそぞろだったのだろう、「今のは集中力がなくなってたので、なかったコトにして。気分悪いので時間を戻しましょう」と、次のアコースティック・セットのために一旦引いたメンバーをステージに呼び戻し、<潮騒>を歌い出しから演り直した。ある意味タツロー・ライヴは、演る方だけでなく、オーディエンスも真剣勝負の場。この日のアンコールで歌ってくれた<Last Step>は、「一瞬でもイヤな思いをさせてしまったので」と、お詫びのサーヴィス・パフォーマンスだった。

こういうスタンスに、「金を払っているんだから自由に楽しませろ!という文句を寄せる人もいるだろう。でも氏のような立場にいたら、望む・望まないに関わらず、中途半端なコトは許されない。トコトン真摯にクオリティ・ミュージックを聴かせる人、そしてそれを丸ごと堪能しようとする人、そんな人々が集う場に、異分子は要らない。パブリックな場で、そうした尖った発言を放てる勇気。それもまた、山下達郎という音楽人が、ウルサ方の音楽ファンにとってメンターになり得る数少ない人、という証しでもある。

個人的なハイライトは、マーチンさんの<GUILTY>。いつになく黒い歌い口の達郎さんも然ることながら、佐橋さんのアーニー・アイズレー張りにネバっこいギター・ソロも素晴らしく。普段は飄々としている難波さんも、<ターナーの汽罐車>でエレガントなピアノ・ソロを披露した。あーあ、やっぱりもう一回観たいなぁ…



《Set List》
interlude〜ポケット・ミュージック
1. Sparkle
2. Someday
3. ドーナツ・ソング メドレー
 夏への扉〜ドーナツ・ソング〜ハンドクラッピング・ルンバ
 〜Willie and the Hand Jive〜ドーナッツ・ソング
4. 僕らの夏の夢
5. 風の回廊
6. GUILTY (鈴木雅之への提供曲)
7. FUTARI
8. 潮騒
9. ターナーの汽罐車(Ac.Setで)
10. It's Not Unusual (トム・ジョーンズ カヴァー)
11. The War Song
12. So Much In Love
13. Stand by Me
14. クリスマス・イブ (intro:Joy To The World)
15. 蒼氓 メドレー
  蒼氓〜People Get Ready〜Blowin' In The Wind
  〜私たちの望むものは〜希望という名の光〜蒼氓
16. Get Back In Love
17. メリー・ゴー・ラウンド
18. Let's Dance Baby
19. 高気圧ガール
20. Circus Town
---Encour---
21. ハイティーン・ブギ (近藤真彦への提供曲)
22. Ride on Time
23. Down Town
24. Last Step
25. Your Eyes