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ワーナー・ジャパン【WEST COAST 1300 COLLECTION】から、カナザワ解説執筆ネタをもう1本。アーカンソー出身のケイト・ブラザーズ、75年発表の1stを。レヴォン・ヘルム絡みで来日したり、再編ザ・バンドにサポート参加したりと南部出身者らしい人たちながら、ケイト・ブラザーズ/ケイト・ブラザーズ・バンドと名乗った70年代後半は、アサイラムからのリリース。レコーディングもL.A.ということで、このシリーズでのラインアップとなった。70年代前半はケイツ・ギャングの名で、メンフィス・ソウルの意匠を引き継いだ南部テイストたっぷりのブルー・アイド・ソウルを聴かせた連中である。

プロデュースはスティーヴ・クロッパー。これでアサイラムでブルー・アイド・ソウルというと、直ぐにネッド・ドヒニーの名盤『HARD CANDY』を思い出すワケだが、ネッドよりはもっと直球のR&Bテイスト。デヴィッド・フォスターが10曲中6曲でピアノやクラヴィネットをプレイしているが、そのスタイルは結構ファンキー。それでいてケイト兄弟のモロにスワンピーなサウンドに、程よくメロウなスウィートニングを施している。その他、スコット・エドワーズ/リー・スクラー/ボブ・グラウブ/クラウス・フォアマン(b)、エド・グリーン/マイケル・ベアード/ナイジェル・オルソン(ds)、ウィリアム・スミッティ・スミス(kyd)、マキシン&ジュリア・ウォーターズ(back-vo)等など、名の通った実力派が勢揃い。

レゲエをカましたり、サム&デイヴ張りのポップン・ソウルを聴かせたりもあるが、全米24位をマークした彼ら最大のヒット<Union Man>が、メチャ格好良くて。兄弟とクロッパーの共作で、ギターやシンセサイザーのソロを交えながら、考え抜かれたアレンジとソリッドな演奏で非の打ち所がない。

アルバム・チャートでは158位と伸び悩んだが、作品的には概ね好評だったのだろう。2nd『IN ONE EYE AND OUT THE OTHER(兄弟の絆)』は、ほぼ同体制で作られた。そこではデヴィッド・フォスターに加えてジェイ・グレイドンも参加している。そうしたイナタさを孕んだホワイト・ソウルが都会的ブルー・アイド・ソウルへと変貌していく、そのプロセスを体現しているのが面白くて、拙著ガイド本『AOR Light Mellow』にも掲載した。「エッ、コレってAORなの?」という声は多かったが、そのへ至る南部からのアプローチということで。