keith carradine
再びワーナー・ジャパン【WEST COAST 1300 COLLECTION】から。ライナーは書いてないけれど、日本初CD化で、楽しみにしていた一枚。何せ、今度『AOR Light Mellow』の改訂版を出す時は、コレも掲載しよう!と思っていたアイテムなのだからして…。

端正な顔立ちからもわかるように、このキース・キャラダインは米国の俳優。75年に主役級で出演した『ナッシュヴィル』なる映画で、彼が歌っていたのが本作のアルバム・タイトル曲<I'm Easy>だったそうだ。この曲はサントラ盤からシングル・カットされて、ビルボード誌で全米17位を記録。今は無きキャッシュボックスでは堂々トップ10入りし、アカデミー主題歌賞まで獲得した。

そうしたヒットを受けて、アサイラムが急遽キースとアーティスト契約。<I'm Easy>の新録版を含む、このデビュー・アルバムを作った。プロデュースはL.A.エキスプレスのドラマー:ジョン・グェラン。バックにはラリー・カールトン/リー・リトナー/ディーン・パークス(g)、デイヴ・グルーシン(kyd)、マックス・ベネット(b)、ジム・ゴードン/ハーヴィー・メイスン/アール・パーマー(ds)、ジョン・メイオール(harp)など、ジャズ・フュージョン系の手練れが数多く参加している。

そんな中、キースは全曲ペンを取り、ギターを抱えて歌うスタイル。いわゆるシンガー・ソングライターに他ならないが、バックがバックだけに洗練されたサウンドが心地良く、70年代初めの自作自演家ブームの頃より明らかに垢抜けている。そう、ジェイムス・テイラーで言えば、『SWEET BABY JAMES』や『MUD SLIDE SLIM』ではなく、『WALKING MAN』や『GORILLA』、『IN THE POCKET』といった74〜75年頃のサウンド。マイケル・フランクスが歌ってもハマリそうな<Honey Won't You Let Me Be Your Friend>、しなやかにアーバン・ファンクする<Been Gone So Long>、メロウ・ミディアム<It's Been So Long>、瑞々しさがハジける<Raining In The City>あたりは、完全にプレAORと言って良い。

当時はシングル・カットがなかったようだが、それでもアルバム・チャートでは61位まで上昇する健闘ぶり。78年の2nd『LOST AND FOUND』もなかなか良かった。こちらも単独では未CD化なので、続編の時は是非にも。