mann_weil
ようやく落ち着きを取り戻してきたせいか、コレをマトモに紹介していなかったコトにいま気づき…。3ヶ月前のゴールデン・ウィーク中に「いま執筆中」としてココにポストを上げただけだっだのを思い出した。Facebookには一度上げたかな。果たして皆さんは手にして戴いただろうか? …というワケで、まだの方に今一度改めて。

「どんな名曲・大ヒット曲も、最初は生まれたままだった…」
これは全ポップス・ファン驚愕・感涙の、バリー・マン&シンシア・ワイル監修の未発表プライヴェート・レコーディング集。いま世にはいくつものマン=ワイル・ソングブック的編集盤が出回っているが、オリジナル・ソロ作品を除くと、提供アーティスト楽曲をコンパイルしたものばかりで、バリー本人の歌唱モノは、豪華ゲストを迎えた00年の新録セルフ・カヴァー集『SOUL & INSPIRATION』が唯一の存在だった。でも今回登場したのは、その元ネタとでもいうべき楽曲集。バリー秘蔵の60年代録音の真正デモと、90年代前半に宅録した、ほぼ弾き語りの音源集だ。

音源の年代が広いだけに、オールディーズ・ファンと80年代前後のコンテンポラリー期のファン、それぞれの聴き処が異なると思う。解説がパイド・パイパー・ハウスの長門芳郎さんとカナザワのダブル・キャストなのも、そのため。とりわけAOR好きを感激させるのが、クインシー・ジョーンズ<Just Once>、セルジオ・メンデス<Never Gonna Let You Go>といった名ラバードのオリジナル・デモだ。なんとビックリ、この2曲は、クインシーの秘蔵っ子と言われて世に出るジェイムス・イングラムが、無名時代にデモ・シンガーを務めたものなのだ。

シンシア「この曲(Just Once)で、彼(ジェイムス・イングラム)を初めて使ったのよ」
バリー「それまでは、基本的にデモは自分で歌ってたんだけど、この曲はポップス性であると同時にR&Bの特性を持っていたので、本物のR&Bシンガーを求めていたんだ。確かリンダ・ペリーが紹介してくれたんだったと思う。(中略)彼が歌い出した時、シンシアと私は自分の耳に入ってきたものが信じられなかったよ! 彼は素晴らしかった。シンシアと顔を見合わせたんだけど、私はもう少しで心臓発作を起こしてしまいそうだったよ」(ブックレットのインタビューより抜粋)

かくして、クインシーがプロデュースしていたジョージ・ベンソンのアルバム(『GIVE ME THE NIGHT』に提供するはずだった<Just Once>は、行き先を変え、クインシー自身に送られた。そして楽曲はもちろん、新人ジェイムス自身を大層気に入ったクインシーは、ほとんどデモの歌い回しそのままで完成ヴァージョンを録ることになった。セルジオ・メンデスの<Never Gonna Let You Go>では元HEATのジョー・ピズーロが歌っているが、あれもジェイムスのヴォーカルに酷似。おそらくセルジオも彼を起用したかったのだろうが、契約の関係でNGになったものと思われる。

とにかく、音源も貴重なら、本作プロデューサー:フレッド・モーリンによるバリー&シンシアの超ロング・インタビューも超貴重。しかも初回特典のボーナス・ディスクには、本編未収の<Just Once>や<Never Gonna Let You Go>のバリー歌唱デモ・ヴァージョンが入っている。これは早めのゲットが肝要よ!