barry manilow 78
某SNSで AOR v.s.MOR の談義が盛り上がっている。AOR=Adult Oriented Rock、MOR=Middle Of the Road。その違いを書き出せばいろいろあるけれど、AORは基本的にロックで、シンガー・ソングライターやバンドが中心。MORは文字通り中道ポップスで、歌唄いが中心にいることか。昭和なイメージの中古レコード屋さんには【ヴォーカル】というコーナーがあって、ペリー・コモやアンディ・ウィリアムス、トム・ジョーンズ、ポール・アンカ、バーブラ・ストライザンドあたり、あるいはシャンソンとかカンツォーネ系も一緒くたになっているのが珍しくなかった。AORは当時はまだジャンル的認知度が低かったから、大抵はロックのアルファベット別のコーナーや、シンガー・ソングライターに分類。でもソロ・アーティストの場合は、ちょっと間違ってヴォーカルに入っているコトもよくあった。

昨年の【AOR CITY 1000】、今年の【AOR CITY 2017】で積極的に取り上げたバリー・マニロウは、そうしたヴォーカル・コーナーの大常連。実際はイイ曲を書くソングライターでもあるけれど、ヒット曲の多くは外部ライターの作品だし、オーケストラを従えた作風自体が いわゆるシンガー・ソングライターらしくは見えない。こういうアーティストは、自ずとエンターテイメント性が高くなると同時に社会的主張からは離れてしまうワケで、勢いロック・ファンからは軽く見られる。AORもかつてそういう扱いを受けたものの、ポップ・ヴォーカルはもっとその傾向が強く、鼻にも掛けられていなかった気がする。でもコレって世代的なモノで、カナザワよりひと世代上は普通に洋楽チャートで楽しんでいた様子。良くも悪くも70年前後のロック共同体幻想が、そうしたイメージの壁を作ってしまったのではないか。

でも90年代以降の洋楽ファンは、そういう負のイメージは持っていない。例えば渋谷系世代の音楽的ルーツは、普通にソフト・ロックや60年代ポップスだったりするワケだ。レア・グルーヴやフリーソウル世代の音楽ファンが、何の抵抗もなくバリーの代表曲<Copacanana>を受け入れるのを知った時は軽いショックを受けた。でもそういう無意味なバイアスを掛けてしまう世代は、70〜80年代を知る者のごく一部。実際昨年の【AOR CITY 1000】でも、バリーの再発アイテムは予想以上の上位実績を上げたし、超オタク系AORマニアであるBlue Peppers 福田クン(今年24歳)に「バリーってどうよ?」と訊くと、「フツーにAORとして聴いてますね」と言われる。なのにコンピ『Light Mellow SEALINE』に<Copacabana>が入ってないのは、こちらの許諾申請に対して、後年エディットされた12インチのダンス・ヴァージョンを入れろ!と本国サイドが指定してきたため。でもそれだと今回のコンピの趣旨から逸れるので、翻ってバラードにしてやった

一方で今回はバリー作品から4作を復刻。うち3作は全盛期のアルバムだが、そこに敢えて選んだコダワリの一枚が、この『SUMMER OF '78』なのだ。リリースは96年、当然初めからCDで発売されたモノである。

コダワリの理由は、これが70年代に流行ったAOR系楽曲のカヴァー集だから。タイトルになった78年は、まさに<Copacabana>が全米トップ10ヒットになった年。バリーにとって良き思い出の多い年だったのだろう、本作収録曲も78年発表の楽曲や77〜78年にチャートを賑わしていたヒット曲が多い。ザッとオリジナル出典を上げてみよう。

1. Summer Of '78  ※唯一のオリジナル曲。
2:Interlude: Love's Theme(愛のテーマ)/ Love Unlimited Orchestra
3. Reminiscing(追憶の甘い日々)/ Little River Band(78年全米3位)
4. I Go Crazy / Paul David(78年全米7位)
5. When I Need You(はるかなる想い)/ Leo Sayer(77年英米で首位)
6. The Air That I Breathe / Albert Hammond, The Hollies, Olivia Newton-John
7. Bluer Than Blue / Michael Johnson(78年全米12位・ACチャート首位)
8. We've Got Tonite / Bob Seger & The Silver Bullet Band(78年全米12位)
9. I'd Really Love To See You Tonight(秋風の恋)/ England Dan & John Ford Coley(76年全米2位)
10. Sometimes When We Touch(ふれあい)/ Dan Hill(78年全米3位)
11. Never My Love(かなわぬ恋)/ Association, 5th Dimension, Blue Suade, Addrissi Bros.
12. Just Remember I Love You(切ない想い)/ Firefall(77年全米11位・AC首位)

…とまぁ、こんな具合。73歳になった今年は、ゲイ疑惑を認めたり、新作『THIS IS MY TOWN SONGS OF NEW YORK』がアルバム・チャート12位と久々の大ヒットになったりと話題も豊富だ。日米の人気格差が大きく、来日公演実現のハードルは高いが、せめてこの再発で不必要なイメージを取っ払えれば、と願っている。