bernard ignher
とうとうこの日が来てしまった。シンガー・ソングライター、アレンジャー、プロデューサー、マルチ・ミュージシャンのバーナード・アイグナーが、14日に逝去。近年は脊椎管狭窄症を患ってたそうだが、死因は肺ガンだという。享年72歳。“とうとう” と書いたのは、彼が遺した唯一のソロ・アルバムが日本制作で、未だCD化されていないから。権利の行方は明白で、カナザワも何度か繰り返しアプローチしてきた。が、ずーっと状況は変わらず…。出せない理由はシンプルで、それゆえ外部からは解決の糸口が見つからない。それが本人逝去で更に遠のいてしまった気がしている。

バーナード・アイグナー(アイナーの表記もアリ)は1965年にディジー・ガレスピーと知り合い、彼のバンドに加入。その後、ディジーの紹介でラロ・シフリンやサラ・ヴォーンと共演している。74年、クインシー・ジョーンズの名盤『BODY HEAT』にソングライター/シンガーとして抜擢。クレジットにはシッカリと “introducing BERNERD IGHNER” と明記され、ミニー・リパートンやリオン・ウェア、アル・ジャロウと肩を並べて注目された。その時の楽曲が、かの<Everything Must Change>である。

翌75年、マリーナ・ショウのこれまた名盤『WHO IS THIS BITCH, ANYWAY?』をプロデュースし、4曲を提供。編曲・鍵盤でも大貢献し、マリーナ人気を決定づけた。一方<Everything Must Change>はランディ・クロフォードやニーナ・シモンが取り上げて有名になり、ビリー・ポールやジュディ・コリンズ、ペギー・リー、バーブラ・ストライサンド、ナンシー・ウィルソン、ジョージ・ベンソン、イヴォンヌ・エリマン、サリナ・ジョーンズ、カーメン・マクレエ、ジーン・カーン、ルー・ロウルズ、オリータ・アダムス、フィル・ペリー、そして吉田美奈子に笠井紀美子など、たくさんのカヴァーを生んでいる。他の楽曲もジョン・ルシエンやロドニー・フランクリンらが好んで取り上げ、スモーキー・ロビンソンやジェイムス・テイラー、シーウインド、ウェブスター・ルイス、シェリー・ブラウンらのアルバムにはゲストやコーラスで参加した。裏方ではあるが、なかなかに多才な人なのだ。

ワン&オンリー作『LITTLE DREAMER』(78年)でも全曲アイグナーが曲を書き、アレンジもほぼ自らの手で。リズム・トラックは東京で録られ、渡辺香津美(g)、村上ポンタ秀一(ds)、深町純(syn)、浜口茂外也(kyd)らが参加した。米国からは兄弟と思しきキース・アイグナー(b)、ジェイムス・ギャドソン(ds)、ブルー・ミッチェル(tr)らが加わっている。聴けばローズの響きや弦が心地良く鳴っていて、優しくマイルドなクルーナー・ヴォイスに包まれる感じがナイス。渡辺香津美がエリック・ゲイルやデヴィッド・T・ウォーカー張りのエロいギターを弾いているのも珍しい。アルバム・ラストはもちろん<Everything Must Change>。ピアノとストリングスをバックに、アイグナーが朗々と歌い上げる。

果たして今後このアルバムがCD化されるかどうかは分からない。ココのレーベルは、一度はCD化された作品でも今はNGというモノが少なくないし、アイグナーと同じ理由で再発が頓挫しているケースも多い。原盤制作会社でもあったから、他のレコード会社から出た作品なのに原盤管理がココで、出し直せないタマもある。事情を聞いてるだけに、どーにかならんモンですかね?と思っている関係者は、きっと多いのではないだろうか?

そんな淡い期待を抱きつつ、今はそっとアイグナーにRest in Peace を…。