mayumi shinozuka
勢いに乗って、【Light Mellow 和モノ】オリジナル・アルバム・リイシューのユニバーサル編第1弾からもう1枚。40歳代以上の音楽好きなら、篠塚満由美と聞いてピンとくるだろうか。もしかして、モノマネ女王だったり、作詞家だったりするかもしれないけれど…。でも元々は、中3トリオやピンク・レディを生んだ伝説的オーディション番組『スター誕生』のグランド・チャンピオンで、74年にデビューした実力派なのだ。ただ器用さが裏目に出たのか、アイドルと歌謡ポップスを行ったり来たりで路線が定まらず、更にロック・バンドで売り出したり、なんちゃってディスコを歌っているうち、どんどん脇道へ逸れてしまった人なのだ。

その満由美嬢が実力を遺憾なく発揮したのが、80年の本作。アレンジが寺尾聰をアテる前年の井上鑑、そして何とリズム隊が、英国から招いたロバート・ベイリーとクマ原田というゴンザレス/ブレックファースト・バンドの名コンビなのだ。

…と言ってもシティ・ポップス系和モノ・ファンには通じないかな? ロバートはジェフ・ベックの『BLOW BY BLOW』や『WIRED』で叩いてたドラマーで、近年はインコグニートでの仕事が有名。直近ではスティーヴ・ウィンウッドと一緒にプレイしている。クマ原田はステージ101で弾いていた人で、その後渡英。セッションマンとして働きながら、レコーディングでロンドンを訪れる日本人アーティストのコーディネイターなども務める。他のメンバーは今剛/矢島賢(g)、清水靖晃(sax)など。

こうして絶妙にグルーヴするリズム隊を得た本作。スターター<ムーンライト・シャワー>やシングB面曲<Weight>、<Easy Come Easy Go>、そしてポップな<Midnight Blue>あたりのシンコペイト・リフレインは、まさに聴きモノ。アーバン・ミディアム<フォトグラフ>も美味だし。それでもブルージーな<いきていくわ〜ダメよ>の水を得た魚のような歌いっぷりを聴くと、彼女は金子マリのようなロックン・ソウル姐ちゃんとしてデビューさせるべきだったのでは? なんて思ってしまう。生まれた時代が少し早すぎたよ…。