jin_kirigaya
引き続き【Light Mellow 和モノ】オリジナル・アルバム・リイシューのユニバーサル編第1弾から。アーバンかつシットリしたメロウ・フォークの憂いを繊細に表現するシンガー・ソングライター:桐ヶ谷仁の傑作3rdアルバム『JIN』(83年発表)を、14年ぶりに再復刻。前2作はアルファからの登場だったが、今作で東芝EMI(当時)へ移籍し、プロデュース&アレンジは全編、恩師 松任谷正隆が当たっている。

当時の桐ヶ谷はデヴィッド・フォスターやジェイ・グレイドンといった煌びやかなAORを好んで聴いていたらしいが、その音から連想するのは、スティーヴン・ビショップやマイケル・フランクスといった、ナイーブさが売りのアーティストたち。中学の時に早くもボサノヴァにハマっていたそうだから、いわゆる四畳半フォークに行かず、洋楽的ポップ・サイドに止まったのはよく分かる。でもビート・チューンがほぼ皆無だから、一聴しただけでは、かなり地味な作品に映ること必定。でもジックリと身を浸すように聴き込んでいくと、いつしか心の奥の襞の部分にジンワリ根を下ろしていたりする。派手ではない分、ふと気づくと感情移入している自分を発見させられる…、そんな一枚だ。

基本的に桐ヶ谷仁自身が詞・曲を書いているが、ユーミンが3曲、吉田美奈子が1曲、詞を提供/補完している。演奏陣も林立夫(ds)、高水健司(b)、松原正樹/安藤正容(g)、齊藤ノブ/浜口茂外也(perc)、そしてコーラスには山本潤子(Hi-Fi Set)、須藤薫、広谷順子、弟ボビーこと桐ヶ谷俊博ら。マンタさんプロデュースで、ほとんどユーミンと同じ顔ぶれで作られているから、当時はやはりその筋から注目されたそうだ。

“シティ・ポップ” というと、何だかキャッチーなハジケっぷりの良いアーティストが思い浮かぶが、当時はこんなウェットな歌唄いもいたのだ。こうした心の機微に触れる音楽の魅力は、今の20歳代の若者たちに分かるかな?