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今回も【Light Mellow 和モノ】オリジナル・アルバム・リイシューのユニバーサル編から、網倉一也とベテラン:りりィの作品を2枚まとめて。これで第1弾ラインアップ6枚は、すべて紹介させて戴いたことになる。ちなみに当初は第1弾でリリース予定だった鈴木雄大の初期2作は、諸般の事情から第2弾にシフト。こちらは10/25に計7組11枚のラインナップでお届けする予定だ。

さて、まず網倉一也。彼は作曲家/シンガー・ソングライターとして活躍した人で、81年発表のコレ『SCENE』がソロ2作目。横須賀生まれの26歳(当時)で、父親はプロのサックス奏者。その影響で幼少から音楽に親しみ、高校時代は吉田拓郎に感化された。大学入学後はイーグルスやドゥービー・ブラザーズなどウエストコースト・ロックに夢中になって、バンド活動に明け暮れ、在学中の78年に縁あってレコード・デビュー。その1st『LISTEN TO MY LOVE SONGS』はかなりフォーク寄りの内容だった。が、その後、郷ひろみに<マイ・レディー>、太田裕美に<南風>などを提供。日本のポップス・シーンも都会的洗練が進み、作編曲家やミュージシャンたち、先物買いの音楽ファンの間でAORが脚光を浴びるようになった。

このアルバムも、まさにその影響をモロに受けたもの。直球エアプレイ・スタイルの<THE BEST OF WOMAN>やタイトル曲<SCENE>、ハジケるピアノ・リフも印象的な<PAIR ~Pink or blue>、少しばかり寺尾聰っぽい<SHADOW VOICE>あたりが、カナザワのリコメンド。参加メンバーが難波正司(kyd)、是方博邦(g)、六川正彦(b)、多田牧男(ds)といったセッション・ミュージシャンたちで、アレンジも難波と六川が手掛けているから、みんな一緒にアイディアを出し合い、研究心を燃やしながらプレイしていたのが手に取るように伝わる。一方<マイ・レディー>のセルフ・リメイク、イーグルスの名曲に似た<スクランブル交差点>は重鎮アレンジャー:船山基紀の仕事で、元来のフォーク流儀や歌謡エッセンスが残っている。本作後も網倉は職業作曲家に専念し、最近になってシンガー・ソングライター活動を再開したらしい。

さてシリーズ紹介のトリは、昨年亡くなった大御所りりィ。デビュー以来籍を置いていた東芝EMI(当時)最後の作品で、80年発表の通算10作目にあたる。熱心なりりィ支持派なら御存知のように、この頃の彼女はジャズやソウルなど多彩な音楽エレメントを咀嚼し、ハイブリッドなクロスオーヴァー・サウンド、いわゆるシティ・ポップスやAORの領域に足を踏み入れていた。前作『マジェンダ』は井上鑑が中心になっての制作だったが、今回はスケジュールの都合か国吉良一が中核を担い、初期からの盟友:木田高介も2曲を手掛けた。参加メンバーは今 剛(g)、田中章弘(b/元ハックルバック)、上原 裕(ds/元シュガー・ベイブ)、後に角松敏生のバンドに参加するインド人ドラマー:ニヤナ・ムールティ等など。

スターター<風のランナー>は、ウィンディなAORチューン。ライト・ステッピンな<フルムーンナイトパーティー>は、キャッチーなサビと今剛のギターが印象的だ。また<三年目のラブシチュエーション>は、愛の倦怠を程良きレイジー・ファンクに乗せて表現している。時流を意識してザ・ナック風に料理したシングル曲<涙の第三京浜(Ride away)>は少々座りが良くないけれど、アルバム・トータルで高品質なアーバン・コンテンポラリー。未だに 「りりィ=私は泣いています」と思っている人は、目からウロコの一枚になるはずだ。