nobuo yagi
まだ続く【ビクター和フュージョン】シリーズ9月発売分からの、カナザワ解説執筆分。…っちゅーか、コレはカナザワが「これも出したら?」とリクエストした一枚。当時のアナログ盤の帯のコピーを借りれば、“ハーモニカで詩を歌うフュージョン・ハーピスト No.1”。今なら “カーティス・クリーク・バンドのハーモニカ奏者”、と言った方が通りが良いかもしれない。

その八木が、カーティス・クリーク結成直前の79年にリリースしたのが、この『MI MI AFRICA』。このタイトル、そして屈強な兵士が描かれたアートワークでチョイと引いてしまう向きもあろうが、ちょっと待て!

よく見れば兵士が肩から掛けているベルトリンクには弾薬ではなく、タイプの異なるハープ各種。CDをスピンさせても、初っ端こそプリミティヴなパーカッションが鳴り出すが、すぐにファンキーかつ都会的なグルーヴが鳴り出し、リー・オスカー(ウォーの白人ハープ奏者)張りのハートフルなハープが導き出される。村上ポンタ秀一(ds)、高橋ゲタ夫(b)、ペッカー(perc)からなるリズム隊は、そのまま松岡直也&ウィシング。アフリカ v.s.ラテンという差はあれど、そうしたルーツに近いリズム表現を都市型フュージョンに乗せている点には、意外に共通点が多い。楽曲提供もしている安川ひろし(g)や倉田信雄(pf)を加えたアンサンブルは、時にスタッフ、CTI/KUDU時代のボブ・ジェームスやグローヴァー・ワシントンJr.を髣髴させる。ハープといっても、ブルースばかりじゃないのよ!

美空ひばり、松任谷由美、松田聖子、大滝詠一、尾崎豊、サザン・オールスターズ、宇多田ヒカル、中島みゆき、今井未樹、井上陽水,槇原敬之、松山千春、福山雅治、玉置浩二、氷室京介、平井堅、浜田省吾、ドリーム・カム・トゥルー等など…。八木の名は知らずとも、このセッション歴からすれば、彼のハーモニカを聴いていない音楽ファンなど皆無。今こそ再評価を熱望したい一作だ。