elliot lurie
8月に発売されたソニーミュージックのAOR廉価シリーズ『AOR CITY 2017』 全98枚。監修者である自分自身がアイテムのフォローを全然できていなかったので、折を見てココで紹介していこうと思う。そしてその最初が、このエリオット・ルーリーが75年に発表したワン&オンリー作『ELLIOT LURIE』である。

このエリオット君は、72年の全米No.1ヒット<Brady>で知られるルッキング・グラスの元メンバー。元々はハード・ロック志向の強い学生バンドだったそうだが、ルーリーの昔の彼女を歌ったポップなこの曲がヒットし、バンドの目指すところとライヴを観に集まったオーディエンスの間に齟齬が生まれてしまった。思い悩んだ彼は、名匠アリフ・マーディンがプロデュースした2作目『SUBWAY SERENADE』を最後にルッキング・グラスを脱退し、ソロに転向。そこで作られたのが、このアルバムになる。

プロデューサーはデヴィッド・カーシェンバウム。デュラン・デュランやトレイシー・チャップマン、ジョー・ジャクソン、ブライアン・アダムス、トーリ・エイモスらとの仕事で知られるが、本作当時はまだ駆け出しで、現場ではアレンジで参加したマイケル・オマーティアンの貢献が大きかったようだ。オマーティアンは既にスティーヴ・バリの右腕として活躍し、スティーリー・ダンからも重用。自身のリーダー作やスタジオ・ユニット:リズム・ヘリテッジでもアルバムを発表していた。翌年初頭に全米No.1になる<Theme from SWAT(反逆のテーマ)>も、この頃からTVで流れ始めている。

参加ミュージシャンも当時のオマーティアン人脈と言って良いだろう。ジョー・サンプル、ウィルトン・フェルダー、ラリー・カールトンらクルセイダーズ勢、後年TOTOを組むデヴィッド・ペイチとデヴィッド・ハンゲイト、それにエド・グリーンやアーニー・ワッツ、ウォーターズ、キム・カーンズなど。何の事情か、1曲だけスティーヴ・ガッドやラルフ・マクドナルドが参加したニューヨーク録音曲があるのが面白い。75年録音といえば、ボズ・スキャッグス『SILK DEGREES』の前年。エリオットのヴォーカルもAORというより多分にMOR(Middle Of the Road)的で、いわゆる洗練されたブルー・アイド・ソウル、すなわちプレAOR風になっている。でも臆面もなく、<Disco>なんて曲を歌ったりしてるあたり、なんとも時代だなぁ…

ちなみにエリオットが抜けたルッキング・グラスは、新人シンガーのマイケル・リー・スミスを迎えてフォーリン・エンジェルスと改名し、ポップなハード・ロック路線を模索。キッスのマネージャーの目に止まり、スターズ(STARZ)として76年に再デビューしている。当のエリオットも表舞台は去ったものの、やがて映画やTVの音楽を作るようになり、映画会社の音楽部門で重役を務めるまでに。03年頃からルッキング・グラスを再編し、ノスタルジア・サーキットでショウを持ち始めた。最近はヨット・ロックのフェスなどにも出演。健在ぶりを示している。