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8月に発売されたソニーミュージックのAOR廉価シリーズ『AOR CITY 2017』 全98枚からのピックアップ。マッスル・ショールズで活動していた大型バンド:ファンキー・コミュニケーション・コミッティー、略してFCCが、80年に発表した2ndアルバム『DO YOU BELIEVE IN MAGIC?』を紹介したい。

プロデュースはテリー・ウッドフォード&クレイトン・アイヴィのコンビ。AORファンにはロバート・バーンやバーン&バーンズの制作陣として知られ、最近もテルマ・ヒューストンの未発表曲集や、ようやく国内盤発売が決まった英国デュオ:リード・ブラザーズの2nd『BLACK SHAHEEN』を手掛けていたことで知られる。元々は、“モータウンと契約した初の白人プロデュース・チーム”と言われ、テンプテイションズやシュープリームス、コモドアーズ、G.C.キャメロン、ジェリー・バトラー、シャーリーンといった同レーベルの大物に関わっていた。ウッドフォードは映画『黄金のメロディ』にも登場した伝説的スタジオ:マッスル・ショールズ・サウンドの元スタッフ。72年に独立しウィッシュボーン・スタジオを建設したが、その際にパートナーとなったのが、ミュージシャン集団:フェイム・ギャングにも名を連ねたkyd奏者:アイヴィであった。

このFCCは、ヴォーカル兼ギターのデニス・クリフトンを中心とした5人組として、79年に『BABY I WANT YOU』でデビュー。タイトル曲が全米47位とスマッシュ・ヒットした。それに続くこの2作では、メンバーが1人増えて6人組に。一方で音作りは一気に垢抜け、洗練へ向かっている。例えば、オープニング<Give Me A Reason>は後期ドゥービー・ブラザーズみたいだし、続くタイトル曲は涼やかなサウンドと暑苦しい歌声のコントラストにニヤリ。<Falling Out Of Love>はもろスティーリー・ダン風のリフで構成されているし、ラリー・カールトンやナンシー・シャンクスも歌っていた<Where Did You Come From>は、ウッドフォード&アイヴィが制作したウィリアム・D・スミス『SMITTY』(78年)からのメロウ・ミディアム。ファンキーに畳み掛ける<How Do You Like Your Love>はロバート・バーンの提供曲で、<Don't Hold Back>は初ソロ作を出したばかりのブランドン・バーンズとデニス・クリフトンの共作曲。<More Than A Lover>は唯一のバラードで、ボズ・スキャッグス<Lowdown>を髣髴させるダンス・チューン<Let The Love On Through>で小気味良くクロージングを迎える。

作品通して、ソウルフルな灼けた歌声と厚みのあるハーモニーが身上。制作陣の狙いはもっとアーバンな音にあったと思うが、幸か不幸か、バンドの体質そのものは南部特有のルーズさにある。このアルバムを出して消滅してしまったFCCだが、時代の音の趨勢に埋もれた愛すべきB級バンドだった。