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今回から10月25日にユニバーサルから発売された拙監修【Light Mellow 和モノ】オリジナル・アルバム・リイシュー・シリーズを順番にご紹介。まずココでは、全11作中3作を占めるハイ・ファイ・セットの70年代末作品をまとめて。実はハイ・ファイ、84年にCBSソニー(現ソニー・ミュージック)に移籍するまでは、ずーっとExpress/東芝EMIからレコードが発売されていたが、原盤制作は初期5作が後にアルファ・レコードの母体となるアルファ&アソシエイツ、そのあとの6作が彼らのオフィスであるバード・コーポレイション(後のバード企画)だった。それが現在は、アルファ期がソニーのディストリビュート、EMIはユニバーサルに合併ということで、少々ややこしいことになっている。今回はそのEMII在籍前期の作品でCDが激レア状態だった3枚『COMING UP』『閃光 -FLASH-』『QUARTER REST』を、およそ四半世紀ぶりに復刻したワケだ。

78年に発表した通算6作目『COMING UP』は、村井邦彦から離れての初セルフ・プロデュース作品。自ずとアイディアや意気込みがテンコ盛りで、全盛期のバック・バンド:ガルボジンからの流れを継いだ新川博(kyd)がアレンジャーとしてそれを取り仕切った。“フィフス・アヴェニュー”と名付けられた新しいバンドは若手中心で、そこに斉藤ノブ/浜口茂外也(perc)やホーン・スペクトラムがゲスト格で参加。作曲陣にも新進気鋭のレーベルメイト:尾崎亜美、そしてこの年に初ソロ作『KID』を出す木戸やすひろ、まだソロ・デビュー前の濱田金吾などが加わっている。作詞で新井潤子の実姉:奎子さんが参加したほか、パティ・オースティンのカヴァー<Havana Candy>も収録。映画主題歌やCMソングのシングルが続いてアルバムからのシングル・カットがなかった(B面のみ)ため、若干地味な印象があるが、煮詰まり感を払拭して快活な響きを取り戻したのは、そうした制作環境の変化があったからだろう。特に自前で取り組んだコーラス・アレンジには、様々なトライが潜んでいる。

前作から7ヶ月後にリリ〜スした7作目『閃光 -FLASH-』は、作曲/演奏陣を従来路線に戻した安定の作。まずユーミンが、『OLIVE』で自ら歌うことになる<最後の夏休み>を提供。尾崎亜美も夢見心地のジャズ・ワルツ<レイン ワルツ アンド ラビング ユー>を書き下ろした(79年作『リトル・ファンタジー』でセルフ・リメイク)。ラストを締め括るアカペラ<歌を捧げて>は、オフ・コースのカヴァー。小田和正が76年作『SONG IS LOVE』に書いた楽曲で、賛美歌風のオリジナルにジャズのヴォイシングを加味したアレンジがハイ・ファイらしい。洋楽カヴァーが多いのも特徴で、スウィンギー・ミディアム<スクールバンドの女の子>は、英国人シンガー:ナンシー・ノヴァがイタリアで発表したTV番組のテーマ曲<Akiri Non Stop>がオリジナル。完成度はハイ・ファイに軍配が上がるが、編曲アイディアはほぼオリジナルの引用だった。ちなみに彼らがナンシーのカヴァーを歌ったのはこれが3曲目。「どんだけ好きなの」と言いたくなる。ジャズ・バラード<22時15分>は、フランク・シナトラが歌った<A Man Alone>がオリジナル。<夜の長距離バス>は、黒人シンガー・ソングライター:ウィリアム・ソルター唯一のソロ作『IT IS SO BEAUTIFUL TO BE』(77年)収録の<If You Can Believe>が原曲となる。このソルターの相方は、パーカッション奏者/ソングライター/プロデューサーとして知られるラルフ・マクドナルド。彼らはロバータ・フラック&ダニー・ハサウェイ<Where Is The Love>、ロッド・スチュワートも取り上げた<Trade Wind>、グローヴァー・ワシントンJr.<Just The Two Of Us>など多くの名曲を生んできた。バックには、赤い鳥時代の盟友:大村憲司(g)と村上ポンタ秀一(ds)、小原礼/岡沢章(b)、斉藤ノブ/ペッカー(perc)、土岐英史(sax)などの手練れが参加。今剛の参加は、パンタ&ハルでのプロ・デビューとほぼ同時期と思われる。

79年末発売の『QUARTER REST』は、“四分休符”というタイトル通り、しばしの活動休止に入る直前の作。75年のデビューから5年、とりわけ<フィーリング>大ヒット後の彼らは、年2枚のアルバム作りと過酷なライヴ・ツアーに追われ続け、心身ともに疲弊していた。主たるアレンジは、3rd『ラブ・コレクション』以来となる瀬尾一三。そのため新風を呼び込みつつも、従来のハイ・ファイ・スタイルを集大成した作風が本作の特徴となった。そのフレッシュさを呼び込んだのが、この7月に逝去した大物作詞家:山川啓介と、当時脚光を浴び始めたばかりだった名ソングライター:林哲司。とりわけ林は、竹内まりや<SEPTEMBER>の初ヒットに続き、松原みき<真夜中のドア>を発売した直後というタイミングで、まさに先駆的キャスティングだった。林はデヴィッド・フォスター・フリークとして知られるが、ここに提供した<TWO IN THE PARTY>はレイ・パーカーJr.のインフルエンスたっぷりで、思わずニヤリ。対して “集大成” らしく、ユーミン作<緑の街に舞い降りて>と<DESTINY>がココに。両曲ともにユーミン自身が『悲しいほどお天気』に収め、同月発売のいわゆる競作状態になったが、両者は同時にレーベルメイトでもあったから、きっとエールを送りつつ相乗効果を狙った仕掛けだったのだろう。スリリングなコーラスを始め、ストリングスやサックス、マリンバを効果的に配した<DESTINY>のアプローチは、ユーミンとは好対照だ。またファン的には、赤い鳥の末期メンバー:渡辺俊幸の楽曲提供も嬉しいところ。ファースト・クール最終作だけあって、華麗さとウェットなミディアム/スロウが程よいバランスを醸し出し、これまでよりも一層ソフィスティケイトされたアダルト仕様のサウンドとハーモニーが楽しめる。ジャケットの表裏で、イイ女を口説くスケベ男にバーテンダーが水を差す構図もシャレが効いていて楽しい。

山本俊彦が14年3月に急死(心不全・享年67年)し、ソロで歌っていた妻・潤子さんもあとを追うように無期限休養宣言。今回の復刻がファンの皆さんにとって明るい材料になれば幸いだ。