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10月25日にユニバーサルから発売された拙監修【Light Mellow 和モノ】オリジナル・アルバム・リイシュー・シリーズご紹介の2ポスト目は、初CD化となるアルファベッツの2作品。アルファベッツは、元・子供ばんどの湯川トーベン(b,vo)と、彼と長い付き合いがあるサントリィ坂本(kyd,vo)が中心となった、楽しくハジける職人ミュージシャン・バンド。83年に結成され、同年デビュー・アルバム『ALRIGHT!』、翌84年に2nd『BIRTHDAY』をリリースしている。それから35年近い時を経て、ココにようやくの初CD化が実現した。

当初2人が目論んだのは、ポップなライヴ・バンド。その構想を縁のあった音楽事務所へ持って行くと、デモ・テープ制作中にも関わらずトントン拍子に話が進み、ポリドールとの契約が成立。そこで “ステージでコーラスを披露できるロック・バンド” と、狙いが明確になった。そしてサントリィが、バズやオフコースのサポートを経て小柴大造&エレファントでプレイしていたドラムの向山テツを連れてきて、ギター不在のままバンドがスタートした。

1stアルバム『ALRIGHT!』は、トーベンとサントリィが楽曲を持ち寄り、バラエティに富んだ出来に。あまり細かく創り込まず、適度にバラけた感じが、逆に疾走感を生み出している。カナザワ選曲・監修によるコンピ『Light Mellow SUNSHINE』に収録した<Baby Baby Baby>のみ、トーベンがハート・オブ・ザ・サタデイ・ナイト時代に書いた<ムーンライト・ベイビー>の改作。ギターには、レコーディングではセンチメンタル・シティ・ロマンスの中野督夫や元シュガー・ベイブの村松邦男らが参加。RCサクセションやクロスウィンドで活躍した小川銀次は、スタジオ、ライヴ・ツアーとハードなギター・ワークで大きな貢献を果たした。しかしながら、当時はライヴでメンバー全員が歌えるバンドが少なかったにも関わらず、あまり注目されなかった。子供ばんどのハード・ロック的イメージがあったため、ファンがポップなサウンドに戸惑ってしまい、賛否が割れたかららしい。
「オレのルーツはポップス、しかも7インチ・シングル全盛の頃。子供ばんどもハード・ロックと言われるけど、僕はパワー・ポップだと思っているから、筋はちゃんと通っているんです」(トーベン談)
サントリィはブレッド&バターやラッツ&スターをサポートしていたため、彼の楽曲からはそうした持ち味が伝わる。ブレバタがコーラス参加した<Moonlight Moonlight>なんて、まさに湘南テイスト。ライヴでは桑マンこと桑野信義(ラッツ&スター)が参加したこともあったそうだ。それでいて、レコード会社の狙いは “第2のCCB” だったというから笑える。ちょっとチグハグだけど、そのアバウトさが今となっては楽しいところ。今回は、シングル<Windy Girl>のカップリングのアルバム未収曲<STEPふんで>をボーナス追加した。

84年の2nd『BIRTHDAY』で、ギタリスト:太田垣光宏が加入。つのだひろ&スペース・バンドやハリマオでプレイしてきた実力派で、もちろんコーラスも取れ、“全員が歌える” コンセプトはシッカリ貫かれている。そしてそのサウンドは、モロに80’sスタイル。
「そう、80’s丸出し。一時流行ったゲート・エコーがビシバシで、いま聴くと笑っちゃう。でも演奏はナマだから、マトモに聴けるんです。スタジオでバンド・リハーサルして、それを “せーの” で一発録りする経験をさせてもらった。最近の若いバンドはシビレる現場を体験してないでしょ? 正しいレコーディングを知らない。マンションの一室で音を重ねて、差し替えや編集も自由自在で。それじゃ上手くなるワケがない」
エピローグのバラード<Love Song>は、中野督夫が昨年発表したソロ作『輪』でカヴァー。そこでは督さん自身が “トーベンがこの曲を歌わないので、いつの間にか僕のレパートリーになった” と書いていいる。それだけイイ曲、というわけだ。

この2ndは1枚目よりも音的にまとまっている。それはサントリィのニュー・ミュージック的色彩が強くなったから。でもこれがアメリカン・ロック志向のトーベンと噛み合わなくなり…。アルファベット順にタイトルを付けようと、3枚目は『COME ON』と既に決まっていた。なのにバンドは、この2作目発表後のツアー終了後に、モチベーションが下がって自然消滅。トーベンは村田和人のバンドに入ることになった。

メンバー全員が現在もそれぞれ活躍中の職人ミュージシャン集団、アルファベッツ。あの頃の彼らの情熱は、確かにココに籠められていたんだな。