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ユニバーサルから発売された拙監修【Light Mellow 和モノ】オリジナル・アルバム・リイシュー・シリーズ、ご紹介第6弾は、闘病の末に昨年12月に55歳で逝ってしまった天才的シンガー・ソングライター:“ERI” こと菅井えりの1st『SKIP!』(86年)の追悼復刻。近年はヒーリング〜スピリチュアル系のプロジェクトを中心に活動していたが、当ブログ的な興味の対象は、やはり彼女のルーツであるポップ・スタイルの初期2作になる。この『 SKIP!』は どうにも80'sしたアートワークが印象的だが、当時のキャッチ・コピーは、グーフィー森による “おもいっきりYELLOWな気分” というモノだった。なるほどネー

アルバム本編の収録全10曲中半数は、ERI自身の作/共作。それを名手:新川博(kyd)アレンジしている。当時の新川は、カルロストシキ&オメガトライブ、菊池桃子、中原めいこ、松田聖子、小林麻美などを手掛ける超売れっ子だった。その下に、松原正樹/土方隆行/青山徹(g)、江口信夫(ds)、松原秀樹(b)、浜口茂外也(perc)、ジェイク・H・コンセプション(sax)、数原晋(tr)、比山貴咏史、木戸泰弘(cho)ほか、数多くの手練が集結。アートワークに通じる、オモチャ箱を引っ繰り返したような遊び心満載のポップ・サウンドを構築した。

アルバム冒頭を飾ったリード・シングル曲<ダンシング・シューズ>は、タップ・ダンスのステップを効果的に挟んだシャッフル・チューン。アーバンな<ガラス越しのビクスドール>に続いて、ナイアガラ風サマー・アンセム<恋はドーナツショップで>、竹内まりやを髣髴させるノスタルジックなハチロク・バラード<SUNSET STREET>、カラリとしたポップ・ソング<SUGAR BOY>と、前半はバラエティに富んだ作りが楽しめる。中盤はデヴィッド・フォスターの影響が色濃いパワー・バラード<雨のピリオド>、甘酸っぱい<DREAM IS MY DREAM>、空耳っぽいメロディから再びフォスター調に展開し凝ったコーラス・ワークを披露する<WITH LOVE>と、シッカリ聴かせる流れ。<ロンリネス>は個人的フェイバリットのメロウ・ミディアムで、ラストは2枚目のシングル<ON THE RADIO>で占める。ちなみに86年当時は、CDとLP、カセットが同発され、フォーマットの特徴に合わせて曲順が変更されていた。もちろん今復刻はCDに準じている。

そして今作の目玉は、アルバム未収のシングル4曲をボーナス収録できたこと。というのも、ERIのデビューは、このアルバムの前年に発売されたカヴァー・シングル<思いがけない恋>なのだ。この曲はカナダのディスコ・ユニット:ライム(Lime)によるダンス・ヒット<Unexpected Love>の日本語版。曲調は見事なハイ・エナジー/ユーロ・ビート系で、シンガー・ソングライターである彼女が何故そんな曲を歌うことになったのか、いささか不思議ではある。おそらく知名度を上げるのが目的で、デビュー・アルバムには収めなかったのも納得だ。ただしその時期はジュリアナ全盛より早く、和製ユーロ・ビート物としては荻野目洋子<ダンシング・ヒーロー>(アンジー・ゴールドのカヴァー)と共に先駆的存在。しかも、ライムとERIをミックスしたディスコ向けプロモ用盤まで作られていたからビックリ。この12インチ盤は今、6桁のプレミア価格を付けることもあるようだ。

そしてその<思いがけない恋>のカップリングが<恋のプリズナー>。アルバムから切った2枚のシングルを挟んだ後の4thシングルが、『素敵にクラクション/I LOVE YOU MORE THAN…』だった。スティーヴィー(ワンダー)節全開の<素敵に…>は、徳間ジャパン移籍後の2ndアルバム『RING MY BELL』で再演。その2枚目も引き続き新川のプロデュースで、ジョン・ロビンソン(ds)やネイザン・イースト(b)、マイケル・ランドウ(g)、トム・キーン(kyd)、ジェリー・ヘイ(horn-arr)らが参加した豪華L.A.レコーディングになっている。こちらも機会があったら是非復刻させたいな。