takehiro honda
カブキラウンジ【和フュージョン・ナイト】の開催間際、というコトで、【ADLIB presents ビクター和フュージョン30W】再発シリーズ 10月25日発売分から、カナザワ解説分をピックアップ。…というかこの辺は、自分が「どうせなら一緒に出したら?」と提案したタマですね 8月/9月発売分として書かせてもらった松原正樹や阿川泰子の作品群とは、少々文脈が違っている。

さて、本田竹曠といえば、フュージョン・ファンには、ネイティヴ・サンのリーダー/kyd奏者としてお馴染み。70年に自身のピアノ・トリオでデビューし、10枚ほどのリーダー作を出してきた。73〜78年は渡辺貞夫グループで活躍。そこで意気投合したサックスの峰厚介と新しいスタイルのバンド結成を模索し、それがネイティヴ・サンになった。

この『IT'S GREAT OUTSIDE』は、その前哨戦ともいえる78年作。しかもコーネル・デュプリー(g)、アンソニー・ジャクソン(b)、スティーヴ・ジョーダン(ds)、ウィル・ブールウェア(org)、レイ・マンティラ(perc)、増尾好秋(g)らを従えてのニューヨーク録音盤である。フュージョン好きなら、この並びに思わず濃ゆいプレイを期待してしまうし、ジャズ・ピアノのイメージが強い本田竹曠ソロに、こんなラインナップの吹き込みがあったのかと驚愕するコトだろう。増尾は現地コーディネイター役も担った模様。ブールウェアはレインボーを率いた人で、マンティラはアート・ブレイキーやハービー・マンとの活動暦が長い。ところが実際はこのアルバム、大して話題にならなかった。

もちろん、それには理由がある。クロスオーヴァーはクロスオーヴァーでも、レゲエやカリブのビートを多用した、ゆる〜い作風の一枚なのだ。本田も鍵盤に激情を叩きつけるような姿は見せず、フェンダー・ローズを中心にしたメロウなプレイ。オープナー<I’ll Become The Child>では、思わず恩師ナベサダの<California Shower>を思い出す。当然のこと、意識してそこに寄ったのだろうし、ネイティヴ・サンの音楽性を構築していくプロセスでのトライアルだったに違いない。控えめなサウンドとはいえ、以前から黒人ピアニストに感化され続けてきた本田だから、過激な演奏と背中合わせで、こうしたセンスを持ち合わせていたのだ。特にローズの音色、オルガンやクラヴィネットの使用には研究やアイディアの成果が感じられ、それがネイティヴ・サンに結実したのがよく分かる。

バックでは、コーネル・デュプリーの好演が知られるが、今ではジャンルを超越して名ドラマー/名プロデューサーとなったスティーヴ・ジョーダンの駆け出し時代が楽しめるのが美味しいトコロ。随所で顔を出すスティーヴ・ガッドの真似が微笑ましいが、後にスライ&ロビーに影響されていく彼のレゲエ好きのルーツがココにあったりして…。そんな妄想を掻き立てられる、ユニークな作品でもあるのだ。