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引き続き【ADLIB presents ビクター和フュージョン30W】再発シリーズ 10月25日発売分から、カナザワ解説分を。実はコレも自分が復刻提案したアイテム。いわゆるクラブDJたちによって再評価が進んだレア・グルーヴ系フュージョン作品なので、ADLIB誌の王道フュージョン的な守備範囲からは逸脱してしまうタマだ。もっともゼロ戦は、オーディオ・システム・チェック・レコード向けに組まれた特殊プロジェクトなので、この2作も大型電気店のオーディオ・コーナーで市販された、いわゆるオーディオ・レコードだった。だから普通にレコード・ショップに並ぶ作品を紹介する音楽商業誌ADLIBとは、根本的にあまり馴染まない存在であった。

さて このゼロ戦は、主にTVドラマやアニメ、映画、ミュージカル、CM音楽などの作編曲/サウンド・プロデュースで活躍していた石田勝範(いしだかつのり・石田かつのり表記もアリ)が中心となったプロジェクト。大学在学中からトランペット奏者として才覚を現し、70年代半ば以降、アレンジャーとして成功。アイドルやポップスの仕事も手掛けていたらしい。ただしゼロ戦は半ば匿名的なスタジオ・ユニットで、バンドとしての実体はナシ。ゼロ戦2作も、演奏陣の顔ぶれはガラリと入れ替わっている。

とはいえどちらのアルバムも、主要曲は石田作品。なので音の指向性には、自ずと一貫するモノが。03年の編集盤『ゼロ戦アンソロジー』(ゼロ戦2作と石田のソロ作『BODY TALK』からセレクト)の解説で彼は「ゼロ戦はCTIサウンドを、より若い人に向ける感覚で音作りした」と語り、CTI/KUDUのイージー・リスニング・ジャズを更にファンキーなクロスオーヴァー・スタイルにスケール・アップしようと試みたそうだ。当時よく聴いていたのは、かのクインシー・ジョーンズだという。

76年に発表された第1作『アスファルト』には、大谷和夫(kyd)、長岡道夫(b)、鈴木正夫(ds)、佐野光利(g)、菜花敦(perc)、花野裕子(vo)らが参加。翌77年リリースの2nd『サインライズ』には、村上ポンタ秀一/山木秀夫(ds)、岡沢章(b)、大村憲司/芳野藤丸(g)、益田幹夫(kyd)、ラリー須永(perc)、ジェイク・H・コンセプション(sax)にタンタン(=大空はるみ/vo)らが名を連ねた。このうち、しばしばセッション・ワークで顔を合わせていた大谷、長岡、藤丸、山木の4人は揃ってワン・ライン・バンドを結成し、翌78年にデビュー(その後間もなくSHOGUNに発展)。随所でキレのあるエレキ・ピアノを披露した益田は、既に2枚のリーダー作を発表してジャズからフュージョンへと進化を見せ始めていた。対して大村はまだソロ・デビュー前で、かの名企画『GUITAR WORKSHOP』が2作目と同じ77年。如何にこのゼロ戦が先進的だったかが分かる。おそらくオーディオ・レコードという特殊性が免罪符となって音楽的自由を手に入れ、セールスを気にすることなく様々な実験が行えたのだろう。

1st収録のスペーシーなレア・グルーヴ・チューン<スクランブル>、ドラム・ブレイクで注目されて最近7インチ・シングルが切られたキラー・チューン<サーキット>、爽やかなサンバ・フィールと涼風ストリングスが心地よい<ハンド・スラップ>。そして2ndでも、ウッド・ベースとフリューゲル・ホーンがディープに迫るタイトル曲<サンライズ>、そのムードを電化させた<クール・ヘッド>、爽快なドライヴ・チューン<ワーク・アウト>等など、ハズレはない。…とはいえ、やはり一番耳をそだばててしまうのは、揺らめくようなエレクトリック・ピアノや、クールなストリング・シンセサイザーなどの鍵盤群。当時の最新鋭電子楽器の音色にはどうしたって時代性が反映されるが、それが今の耳には返って新鮮に響く。この辺りが、ゼロ戦や70〜80'sのクロスオーヴァー再評価に結びついているのだ。一昨年だったか、シングル<サーキット>、アルバム『SUNRISE』と、相次いで発売されたアナログ盤は、どちらもすぐにソールド・アウトになったと聞く。もちろんこの2作、オリジナルの形では今回が初CD化だ。

ドラムやパーカッションの細やかなシンコペーション、鍵盤楽器のフェイズ効果をヴィヴィッドに感じ取りたいなら、ポリフォニック・シンセの分厚い音の壁など、もはや無用の長物でしかない。進化の歩みを止めてステレオタイプ化したフュージョンより、リアルに熱きトライアル・スピリットを感じ取れるクロスオーヴァー。その醍醐味が、このゼロ戦の2作に宿っている。