chris rea_road songs
クリスマス・シーズンになると巷に多くのクリスマス・ソングが溢れかえる。そんな中、毎年自分が思い出すのがクリス・レアの<Driving For The Christmas>。家族と祝う本来的な意味が、恋人たちや若者の祭典になってしまった日本のクリスマスを蔑みたくなる、心がホンワカしてくるような名聖歌だ。88年の発表時は、せいぜい全英チャート50位台。しかしその20年後に再びシングル・カットされると、今度は30位台まで上がるヒットになった。山下達郎には敵わないものの、これもまた立派なX'masのポップ・スタンダードと言っていいだろう。そこで今回は、9月末にひっそりとリリースされていたクリスのニュー・アルバムをお届け。やっぱり彼の苦みばしったスモーキー・ヴォイスは、この時期によく似合う。

ご存知の方も多いと思うが、クリスは00年代初頭に死の淵に立つ大病を患い、大手術の末に九死に一生を得た。復帰後はコマーシャリズムに背を向け、ただひたすらに自分のブルース・ロック道を追求。自主レーベルから激シブの作品をリリースし続け、中には12枚組の叙情詩BOXなんてのまであった。死に直面した経験から、吐き出すような創作アイディアが湧き出していたのだろう。生き急いだワケでもないのだろうが、精力的なツアーも行ない、英国では今も絶大な人気を得ている。

そのクリスの約6年ぶりの新作。ずーっと続いた激渋ブルース路線は後退し、ほぼ以前のアダルト・ロック路線に回帰した。その内容は、アートワーク通りのロード・ソング集。そりゃあ洒脱なAORではないけれど、<On The Beach>と謳いつつドンヨリとグレーな歌を聴かせた人だから、能天気な音になる道理がない。それでも彼をよく知るオールド・ファンなら納得の音。若干重めの楽曲はあるけれど、得意のスライド・ギターも気分良く鳴っている。

バックの顔ぶれは、ロバート・アーワイ(g)、ジェイムス・アーワイ(b)、ニール・ドリンクウォーター(kyd)にマーティン・ディチャッム(ds)。マックス・ミドルトン不参加で揺れるようなエレピが聴けないのは残念だけど、クリス自身に大きなブレはない。あとは<Fool>のようなキャリア・ソングになり得る曲があれば、と思うが、さすがにこれは難しいかな? でも “懐かしさ” とは異なる、いわば “攻めの保守性” が、彼の音楽には宿っている。