christopher cross_017

ほぼ年1回の割でコンスタントに来日公演を繰り広げているクリストファー・クロス。日本発売された『SECRET LADDER』以来、約3年ぶりのニュー・アルバムがココに到着した。そしてもちろん、クリスといえばフラミンゴ。この色鮮やかなフラミンゴのアートワークに、思わず胸が高まってしまう。

メンバーも前作同様、キース・カーロック(ds)、ウィル・リー(b)、エディ・ホビザル(kyd)にクリス(g)で、4リズムを形成。サックスにはツアー・メンバーでもあるアンディ・スズキが入っている。<Roberta>はクリスが敬愛するジョニ・ミッチェルに捧げたもの。"Roberta" とはジョニの本名だ。また<Truth>は、しばしばツアーにも同行するジジ・ワースの作品で、ヴォーカル・パートも2人で分け合っている。アルバム・ラスト<Alvah>は、昨年、轢き逃げされて亡くなったロブ・ミューラーに捧げられたナンバー。クリスとミューラーはアマチュア時代から一緒にプレイしていて、初期主要曲の作曲パートナーでもあった。

だけどアルバムを聴いてみると、いつものクリスとは少し雰囲気が違う。歌声は相変わらず透明感があって、クリスタルの如し。ライトなウエストコースト・スタイルも変わっちゃいない。前作からのキース・カーロック&ウィル・リーのリズム隊は、シンプルながらも細かい表情に富んだ、深みのあるプレイを披露している。

なのに、何処か印象が薄いのだ。例えば、ラリー・カールトンの代表作『夜の彷徨(LARRY CARLTON)』所収のヴォーカル曲のようなテイスト。さすがにインストゥルメンタル曲こそないが、メロディを追うのがギターでクリスはサビしか歌ってなかったり、コーラス程度のヴォーカルだったり…。

そう、クリスのヴォーカルよりも、ギターやバックの演奏をフィーチャーしたニュアンスなのだ。ラリーの場合はギター弾きとして注目されクルセイダーズに加入しながらも、『SINGING / PLAYING』(73年)なるソロ・アルバムを出して、歌モノにも意欲を覗かせた。彼がギターに専念して歌わなくなったのは、82年作『SLEEPWALK』からである。対してクリスの場合、シンガー・ソングライターとして圧倒的評価を受けながらも、ライヴではすべて自分でギターを弾いて、演奏へのコダワリを表してきた。もちろんジョン・メイヤーほどのスキルはないが、きっと彼の登場には大いに刺激を受けたクチだろう。そうした思いを、この新作に籠めた気がする。そこでクリスのサイトを覗いたら、案の定、こんなことが書かれていた。

This is not quite a “guitar” album, but it leaves the listener with no question about his expertise on the subject.

なるほどね…。薄口だと感じたのは、ヴォーカル・パートが少なくアッサリしているから。作品的には従来のクリスを裏切るモノではないし、クオリティが下がったワケでもない。ただ少しだけ作風を変え、意識的にギターやバンドを前に出してみました、ってなトコロか。逆に普段のクリス作品にはなかった、ファンキー・グルーヴと各楽器ソロをフィーチャーした<Baby It's All You>なんて曲もあったりして、これはこれで興味深い。前作でウィルやキースとプレイし、その手応えの確かさから、演奏をフィーチャーしたアルバムを思いつたのかな。まぁ、時にはこんなアルバムも悪くはない。ただそれならば、クリスの音楽的意図を反映したアートワークだったら なお良かった、とは思う。

現時点では国内リリースどころか、輸入盤の国内流通もまだのよう。待ちきれない方は、まずクリスのオフィシャル・サイトへ。