montrose1montrose2

久々にハード・ロック病を露呈。今月売りのレコード・コレクターズ誌2月号の海外盤レビューで、モントローズの1st / 2nd のRemastered & Expanded Edition 各2枚組について寄稿した。自分のハード・ロック歴は、当然ながらディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、バッド・カンパニー、クイーン、ウィッシュボーン・アッシュ、ユーライア・ヒープ…といった英国勢がスタート。でも深入りするキッカケは、デビューしたてのモントローズとスコーピオンズだったのよ。きっと先物買いの勘をイタく刺激されたのだろう。もちろんライヴ盤『蠍団爆発(TOKYO TAPES)』で、<荒城の月>を歌っているひとりは自分です(アレ、日が違うか…?)。

リーダーだったロニー・モントローズが12年3月に亡くなり、ちょうどその遺作『10 X 10』が没後5年を経て昨年秋にリリースされたばかり。ロニーが生前にリッキー・フィリップス(b:ベイビーズ〜バッド・イングリッシュ)、エリック・シンガー(ds:KISS)と録っていた未完成音源を元に、所縁のあるヴォーカリストや、ロニーを敬愛するギタリストらがゲスト参加して完成させた。エリック・マーティン、エドガー・ウィンター&リック・デリンジャー、サミー・ヘイガー、スティーヴ・ルカサー、グレン・ヒューズ、フィル・コリン、トミー・ショウ、マーク・ファーナー、グレッグ・ローリー等など、実に豪華絢爛な顔ぶれだったが、逆に期待しすぎたか、名前負けの感 少々。なので、トリビュート盤を追うように登場したモントローズの初期2作拡大盤の方が、カナザワ的には盛り上がった。

何と言っても初期モントローズは、テッド・テンプルマンのプロデュースで、“ヴァン・ヘイレンのプロトタイプ”との呼び声も高い。主要メンバーはロニー以下、ご存知サミー・ヘイガー(vo)、ガンマ〜ハート〜カヴァーデイル・ペイジなどを渡り歩くデニー・カーマッシ(ds)、後にナイト・レンジャーに参加するアラン・フィッツジェラルド(b/2ndのみ)など、実力派揃いだ。

73年のデビュー作『MONTROSE(邦題:ハード☆ショック』』は、まさに米ハード・ロック界の概念を引っ繰り返した名盤。アイアン・メイデンやアンディ・テイラー(デュラン・デュラン)がカヴァーした<Space Station #5>を筆頭に、冒頭の<Rock THe Nation>、<Bad Motor Scooter>など、縦横無尽に駆け回るソリッドなギターと強力ハイトーン・ヴォーカルを中心とした、疾走感溢れるハード・ロック・チューンが並ぶ。ツェッペリン張りのヘヴィな<Rock Candy>は、高校の時にコピーしましたわ… でもそれを、脂ぎった音ではなく、西海岸産らしいドライでシャキッとした音で聴かせる。このテンプルマンのサウンド・メイクこそが、ヴァン・ヘイレンに受け継がれたノだろう。ディスク2の拡大版は、デモ6曲と、カリフォルニアのFM局でオンエアされたデビュー直前の実質的なお披露目スタジオ・ライヴ。

74年の2nd『PAPER MONEY』は、やはりアイアン・メイデンがカヴァーした<I Got The Fire(灼熱の大彗星)>を含む日本デビュー作。わずか3分にハード・ロックの魅力をギュギュッと凝縮し、しかもポップで電波乗りが良いこの曲は、日本独自にヒットして一気に彼らの知名度を上げた。が、アルバム自体はマーケットを意識した柔軟な作りに転じ、ローリング・ストーンズのカヴァーに取り組んだり、ニック・デカロのストリングスを入れるなど、多彩な音楽性を提示。スターター<Underground>を提供した I.ラパポートは、チャンキーことローレン・ウッドの本名だったりする。更にサミーほどの優れたシンガーがいるのに、敢えてロニーにリード・ヴォーカルを取らせるなど、試行錯誤の跡も…。ボーナス・ディスクは、こちらもスタジオ・ライヴ8曲。1stのボーナスとのダブリもあり、聴き比べも一興だ。

この2作のあと、方向性の違いでサミーが脱退してソロへ。モントローズは新シンガーを加えて2作出したが、マトモな成功を掴めぬまま解散。ロニーは新たにガンマ結成へ向かうが、後期ガンマはシンガー以外はみんなモントローズの元メンバーになっていく。しかも鍵盤は、名アレンジャーであるボブ・アルシヴァーの息子だったり。ロニーのソロ作もギター・フィーチャーのロック・フュージョンで、トニー・ウィリアムスと一緒に来日したりもした。そのキャリアを遡れば、エドガー・ウインターと演る前にヴァン・モリソンやボズ・スキャッグスとの活動歴も。だから、たまたまハード・ロックを名を上げただけ。ロニーはきっと資質的には、ジェフ・ベックやトミー・ボーリンに近い人なんだろうな。