group 87

昨年11月に2度に分けてリイシューされたソニー【Crossover & Fusion Collection 1000】2ndシーズンの計100タイトル。全ラインナップをチェックしたければ、コチラのサイトをご参照頂きたいが、メジャーらしく知名度の高い大物たちが居並ぶ中に、いくつか「?」なアーティストがいる。廉価なので購入のチャンスなのに、正体が分からなけりゃ、そりゃースルーされるよな。おそらくその筆頭のひとつが、このグループ87だろう。もっともカナザワは、00年にUSで初CD化された時に、嬉々としてゲットしたクチ。リイシューはそれ以来で、日本ではもちろん初CD化になる。

このグループ87は、現在は映画音楽方面のサウンド・クリエイターとして知られるマーク・アイシャムが中心になって、パトリック・オハーン(b)、ピーター・マヌウ(g)と組んだグループ。元々はテリー・ボジオ(ds)、ピーター・ウルフ(kyd)を含めたバンド体制でデビュー準備を進めていたが、レコード会社が “マーク・アイシャム・バンド” としてのデビューを要求。それに反発したボジオとウルフがバンドを離れ、残ったメンバーで軌道修正。3人組ユニットとして再スタートを切ったのが、この80年作だ。

だが彼らの反発も当然のこと。オハーンとボジオ、ウルフの3人は既にフランク・ザッパのバンドでキャリアを積んでおり、マヌウもL.A.エキスプレスでロベン・フォードの後任を務めたり、ビリー・コブハムやジャン・リュック・ポンティとプレイしていた。むしろ中核たるアイシャムが一番無名だったワケで、ボジオやウルフが反発するのも無理はない。アイシャム個人の名が多少なりとも広まったのは、80年代後半にECMやWindam Hillから作品を出すようになってからだが、実はこの人、70年代にはビル・チャンプリン率いるサンズ・オブ・チャンプリンのメンバーとして、キーボードやブラスを担当していた。グループ87がユニークな点のひとつは、アイシャムがトランペット、マヌウがヴァイオリンを弾くところ。つまり、普通のフュージョンとはまったく違ったアンサンブルが生み出せる点にあった。それでも本作レコーディングには、ボジオとウルフも参加。プロジェクトの重要構成員として役割を担っている。

とにかくこのユニット、文字通りのエクスペリメンタルなクロスオーヴァー・サウンドを創造する実験性の高い連中で、ジャズ、ロック、クラシックの融合など、御茶の子さいさい。今でいうアンビエントやミニマム・ミュージックを感じさせる部分もあるし、80'sのニュー・ウェイヴ・ポップ・サウンドを先取りした面もある。そう、ボジオとオハーンが組んだミッシング・パーソンズ、ウルフが奥様と組んだウルフ&ウルフやヴィエナは完全にこのユニットの発展型といえるのだ。ウルフがプロデュースしたスターシップ、ワン・チャンあたりにも影響は顕著。全編インストながら、ポップな曲ではMr.ミスターのサウンドとも共通点が多い。ある意味エアプレイと同じで、米国ではまったく無視されたにも関わらず、ミュージシャン仲間や音楽関係者の間では、相当注目されていたようだ。ミッシング・パーソンズがザッパ卒業生のバンドとしてマニアックに騒がれたのを知っていれば、このグループ87の立ち位置も、おおよそ想像できるはずである。

しかしながら、本作リリース後、オハーンはボジオに引っ張られてミッシング・パーソンズに専念。ユニットは2人になり、彼らをバックアップしていたボビー・コロンビー(ex-ブラッド・スウェット&ティアーズ/ジャコ・パストリアスのソロ作は彼の仕事)も米Columbiaを離れてしまった。が、コロンビーが再びクチを訊いてくれたのか、彼の移籍先キャピトルから2作目『 A CAREER IN DADA PROCESSING』(84年)を発表。そこではサポート・メンバーとしてピーター・ヴァン・フック(ds / 後にマイク&ザ・メカニクス)を迎えている。

日本でいうと、クロスオーヴァー/フュージョンとプログレの合間をいくプリズムにも近いかな? ギターはアラン・ホールズワースっぽいトコロもある。いずれにせよ、USからこういう音が80年に出ていた、というのは驚異的。このタイミングで再評価しなくて どうするの?と思う。