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70年代末〜80年代前半に全米チャートでヒットを連発した38スペシャル。この度、A&Mレコード在籍時の10作品(ベスト盤含む)が、紙ジャケットで一気にリイシューされた。最近の洋楽シーンは廉価による大型再発シリーズが目立ち、アーティスト単位で見ると、代表作が2〜3枚ピックアップされるだけなのが常。気に入ったアーティストはカタログを揃えて音楽的変遷を辿りたいカナザワとしては、コスパの良さを嬉しく思う一方で、少々物足りなさも感じていた。それだけに、こうしてアーティスト単位のリイシューを続けてくれるのは、実にありがたい。

この38スペシャルは、レーナード・スキナードの弟分的に登場したサザン・ロック系6人組。77年のデビューで、メンバーには実際にレーナードの看板シンガー:ロニー・ヴァン・ザントの弟ドニーが在籍し、リード・ヴォーカルを取っていた(ルックスやファッションもそっくり)。ツイン・ギターにツイン・ドラムという編成も、もろサザン・ロック的。しかもデビューの年に、かのレーナードのチャーター機墜落事故が起き、兄ロニーが頓死。レーナード自体もそのまま解散状態に陥ったため、自ら後継を謳った経緯がある。

ただしサザン・ロックというと、ある種のヨロシクない固定観念、泥臭くブルージーでルーズ、というイメージがつきまとうワケで…。もちろんそれはあながち外れちゃいないが、レーナードの場合はブギー・スタイルを得意にしながらもブリティッシュ・ロックの影響、特にフリーからのインフルエンスが大きかったし、オールマン・ブラザーズ・バンドも、音に潜むクロスオーヴァーなセンス、ジャズやカントリーからの引用を感じ取ってこそ、面白みが増してくるのだ。アトランタ・リズム・セクションだって、南部のTOTO的なセッション・ミュージシャン集団なワケだし。サザン・ロックとひとクチに言っても、実はいろいろあるワケで、すぐに二番煎じ、三番煎じで手取り早く売ろうとする昨今の音楽シーンとはスタンスがまるで違う。

では38スペシャルは?というと、ポップでキャッチーなサザン・ロックが売り。最初の2作は、如何にも南部というストレートな打ち出しだったが、それに限界を感じたか、79年の3rdアルバム『ROCKIN' INTO THE NIGHT』ではサヴァイヴァーのジム・ピートリックらをソングライターに招き、タイトル曲を全米43位へ。それを機にポップ路線へ舵を切り、時代の要請に応じて、ラジオ乗りの良い南部産アリーナ・ロック〜産業ロックを目指すようになった。そして生まれたのが、上掲の80年作『WILD-EYED SOUTHERN BOYS(サザン・ボーイズ)』と82年の5作目『SPECIAL FORCES(スペシャル・フォーシズ)』である。

日本デビュー作でもある4作目『WILD-EYED SOUTHERN BOYS』は、カナザワが初めて聴いた38スペシャルの作品。当然「レーナードの弟分」という先入観があったので、そのキャッチーな作りに面喰らったものだ。それでも万人向けのキャッチーなメロディには如何せん抗い難く、すぐにお気に入りになった。ジム・ピートリックも4曲のソングライティングに参加。そのうち<Hold On Loosely>が全米27位をマークし、アルバムもチャート18位まで上がって初のプラチナ・アルバムを獲得している。

これに続いた『SPECIAL FORCES』でも、ピートリックが3曲、曲作りに参加。<Caught Up In The Night(想い焦がれて)>が初めてのトップ10ヒットになった。もう1曲のピートリック共作<You Keep Runnin' Away>も2ndシングルとしてトップ40入り(最高38位)し、アルバムもキャリア最高となる第10位をマーク。彼らの代表作に挙げられている。基本路線は前作の踏襲ながら、ポップ・テイストの曲とサザン・フレイヴァーの曲を明確に色分けし、マテリアルごとにメリハリを強調。旧来のファンも、ヒット曲から入ったご新規ファンも、どちらも合わせて納得できるような、そんな作風になっている。

ちなみに38スペシャルは、紆余曲折を経て現在も活動中。オリジナル・メンバーは、もう一人のシンガーだったドン・バーンズだけになっているようだが、この1月にもクルーズ・イベントに参加して演奏するなど、サザン・ロック・バンドの気骨をアピールしている。一緒に出演予定のレーナードが、今年のツアーでフェアウェル宣言しているだけに、何とか頑張って欲しいところだ。