david foster works

昨年の晩秋、AORファンの間でデヴィッド・フォスター来日公演の噂がまことしやかに囁かれた。実際ジェイ・グレイドンがSNSで「デヴィッドと一緒に日本へ行く」とフライング発言し、日程まで公表。それぐらい煮詰まっていたワケで、そこへ向けての企画作も複数動き始めた。カナザワが解説を書かせてもらった『MELODIES OF LOVE』というフォスターのヒット作コンピもそうだけれど、このワークス集もそのひとつ。でもご存知のように、来日の噂は噂のまま、幻に終わった。タレント発掘の TVショウ “Asis Got Talent” でジャッジを務めるフォスターだから、アジア・ツアー自体には大きなスポンサーがついて行なわれたらしいが、そのプログラムの放映がない日本では…、というワケである。

コンピの特徴は、およそ40数年に及ぶ膨大なフォスター・ワークスから、主に70〜80年代の楽曲に絞り込んだこと。何せ一番新しい音源が、87年発表の初CD化シングル<Rendez-vous (Love Lights The World)>なのだから、大ヒット・メイカーとしての名声を確立する以前、AORファンを熱狂させていた頃のフォスターがパッケージされているのだ。ちなみにこの<Rendez-vous>は、ワールドワイド・デビューとなった86年のソロ作『DAVID FOSTER』所収の<Flight Of The Snowbirds>に、旧ソ連軍所属の合唱団が歌を乗せたものである。

収録曲は以下の通り。

1. Love Theme From St. Elmo's Fire / David Foster
2. Will You Still Love Me? / Chicago
3. Through The Fire / Chaka Khan
4. JoJo / Boz Scaggs
5. After All / Al Jarreau
6. Tonight Tonight / Bill Champlin
7. St.Elmo's Fire(Man In Motion) / John Parr
8. Thicke Of The Night / Alan Thicke
9. Rendez - Vous(Love Lights The World) / David Foster
10. Should We Carry On / Airplay
11. Glory Of Love / Peter Cetera
12. It's Something / Leslie Smith
13. No Tricks / Alice Cooper with Betty Wright
14. You / Earth Wind & Fire
15. It's The Falling In Love / Carole Bayer Sager
16. Everchanging Times(Theme From Baby Boom) / Siedah Garret
17. Too Young / Jack Wagner

この中で最大の注目は、アラン・シック<Thicke Of The Night>の初CD化だろう。アランは俳優/タレントにして、ロビン・シックの父親(母親はシンガー:グロリア・ローリング)。かつて自分のTV ショウ『Thicke Of The Night』を持っていて、そのテーマ曲がデヴィッド・フォスター&ジェイ・グレイドンとのコラボレイトによるこの曲だった。16年末に亡くなったが、ビル・チャンプリン『RUNAWAY』のアルバムにも参加するなど、その交流は浅からぬモノだった。またサイーダ・ギャレットのシングル<Everchanging Times>の収録も嬉しいところ。元々サントラ用に作られたが、サントラ盤は存在せず、このシングルのみ。ただし楽曲自体は、アレサ・フランクリン&マイケル・マクドナルドが取り上げているので、知る人は少なくない。 <It's Something>がブレンダ・ラッセルではなく、レスリー・スミス版というのも、マニアを喜ばせるポイントだ。拙監修でリイシューしたレスリーのオリジナルCD『HEARTACHE』も、今ではスッカリ入手困難である。

以前ちょっと書いたが、2010年のフォスター&フレンズ来日時にも、やはり同じような編集盤企画が持ち上がったことがある。その時は、ワーナーがアジア全域向けに組んだヒット曲満載ベストがメインにあり、その裏ベストを日本独自に、という話で、実はカナザワが選曲に当たっていた。その時に許諾申請した中には、今回収録された<Rendez-Vous>もアラン・シック <Thicke Of The Night>も、サイーダ・ギャレット、アリス・クーパーもあった。珍しいトコロでは、アニタ・ベイカー&ジェイムス・イングラム<When You Love Someone>、リサ・フィッシャー<Colors Of Love>、ロジャー・ダルトリー<The Price Of Love>、ランディ・ニューマン<The Natural>、ナタリー・コール<At Last>とかも。当時は未CD化だったアル・ジャロウ<Girls Know How>、ダメもとで<Vices That Care>、チャリティー・コンピに収録されていたベイビーフェイス<If>もリクエストしたな。他社音源では、リー・リトナー<Victory>とか。そうそう、アラン・シックは<Thicke Of The Night>のB面曲<Grandma>もリクエストしたし、<St.Elmo's Fire>のシングルB面でサントラ未収の<One Love>も。手元に残っているリストのヴォリューム感だと、できたら2枚組で行きたいねと、当時の担当者と画策していたのではないかな?

もちろんこれはあくまで申請リストから書いているので、実際にはどれだけOKされたかは分からない。しかしその結果が出る前に、アジア・エリアのメイン・オフィスから企画自体にNGを喰らった。要は「エリア共通のベストを売れ!」ということ。そこにいくつか日本独自曲を追加して出たのが、2枚組『David Foster presents LOVE, AGAIN』であった。

このように、カナザワにはちょっと因縁のあるフォスター・ワークス集。でもアラン・シックや<Rendez-Vous>の初CD化はAORファンには要注目だし、業界的には意外な収録もあり、素直に嬉しい。あとは今年こそ是非フォスターに来日してもらって、もうひと山、盛り上げて欲しいところである。