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昨年12月にスタートした豊島たづみオリジナル・アルバム・リイシューのシリーズ後半が、いよいよ発売に(前半の紹介はコチラから)。登場したのは、4作目にあたる80年作『淑女のたしなみ』と、寿引退前の最終作となった81年の『LONELY ONE』。これで彼女の現役時代の5作品は、すべて紙ジャケット仕様でCD化されたことになる。う〜ん、実にメデタイ

TAZZの初期作品は、<とまどいトワイライト>という代表的ヒットを産み落とした一方で、ある意味 中島みゆきに通じるような、情念の女性シンガー・ソングライターというイメージを固定化させた。でも当然ながら、彼女にはいろいろな側面があるわけで…。それ故、従来イメージからの脱却を目指して幅広いサウンド・アピールを始めたのが、3作目『STILL NIGHT』からだと思っている。だからそれに続くこの2枚は、シティ・ポップス的見地から見ると、かなり満足度が高い。女性らしい心情を若干の苦味を込めて表現するのはTAZZの得意分野といえるが、音がだいぶ明るくなったので、サラリと聴ける。

『淑女のたしなみ』は、外部ソングライターから楽曲提供を受けて構築した作品。しかも10曲中5曲を筒美京平が提供していて、うち2曲は松本隆が詞をつけている。来生えつこも3曲作詞。これはおそらく、彼女のイメージを拡げる手段だったのだろう。シティ・ソウル的なグルーヴ感のある楽曲が増え、コーラス・アレンジも凝っている。参加メンバーは、林立夫/宮崎全弘(ds)、矢島賢(g)、後藤次利(b)、田代マキ/富樫春生/山田秀俊(kyd)、吉川忠英(ac g)、キムチ木村(perc)、ジェイク・H・コンセプション(sax)、数原晋(flugelhorn)など。そしてコーラスには、伊集加代子、梅垣達志、松下誠ら総勢10人の名が。なるほどチョッとした職人セッション・シンガーたちの集まりだわ。飛び抜けたキラー・チューンがなく、ちょっぴり地味な存在に甘んじる1枚だが、15年の『Light Mellow 豊島たづみ』(詳細はここから) に4曲チョイスしているように、クオリティは充分。

通算5作目『LONELY ONE』は、TAZZのライトメロウ的最高作、と言っても良いモノ。コンピにも5曲チョイスしているが、そのうち4曲が彼女自身の書き下ろし。ってか、TAZZがアルバムに書いた自作曲が5曲だけなので、如何にソングライターとして波に乗っていたかが伝わる。もう1曲は、アレンジを担った川村栄二が作曲、下田逸郎作詞によるメロウなタイトル・チューン。ということは、やはりこのチームのコンビネーションが良かったのだろう。テーマは都会のナイト・ライフを彩る光と影。それを時にはスティーリー・ダン風にヒネリを加え、またある時はストリングスを滲み渡らせたダルなボッサで、またある時はヴェルヴェットなハーモニーで優しくマイルドに、そして時には演奏力をフレーム・アップしてのソフィスティケイト・ファンクで、ハートフルに表現していく。

参加ミュージシャンは、宮崎全弘(ds)、富倉安生(b)、松原正樹(g)、富樫春生(kyd)、キムチ木村(perc)のコア・メンバーに、八木のぶお(harmonica)や石川鷹彦(dobro)らスペシャリストを随所に。コーラスは引き続き 梅垣達志、松下誠、尾形ミトらが参加している。

またこの『LONELY ONE』は、翌年リリースされたアルバム未収シングルA/B面<燃え尽きて、デザイア>と<まぼろしのQueen>をボーナス収録。更にカラオケ10曲を収録したボーナス・ディスクが付いている(『淑女のたしなみ』はカラオケ2曲のもボーナス収録)。エルダー層の音楽ファンなら<とまどいトワイライト>は聴いたことがあると思うが、それだけで彼女を判断せず、是非オリジナル・アルバムやアーティスト・セレクションに手を広げてほしいのだ。