dennis budimir

ライヴ三昧ウィークのポケット日は、夕方から都内某スタジオで打ち合わせ。その前に雑用をこなしながら、こんなアルバムを聴いた。西海岸のスタジオ・シーンで長く活躍しているベテランのジャズ・ギタリスト:デニス・バディマーのリーダー作。60年代にいくつかソロ・アルバムを出しているのは知っていたが、スウィング〜4ビート物らしくスルーしていた。でもこのアルバムは、65年録音ながらもジャズ色は薄く、ポップ・カヴァーが多数。「ジェイ・グレイドンとも共演しているベテランに、こんなアルバムがあったのか」と、思わず手を出したワケである。

そもそもこのアルバムは、ジャズ・レーベル:メインストリームの廉価再発の一環。64年に発足したこのレーベルは、当初は名前通りにジャズ本流であるストレート・アヘッドなスウィング系作品をリリースしていた。それが70年代に入って、ジャズ・ファンク路線を導入。クインシー・ジョーンズやアート・ファーマー、ブルー・ミッチェル、シンガーではサラ・ヴォーンやヘレン・メリル、カーメン・マクレエなどのアルバムを出すようになる。そのメインストリーム作品がドカンと安価で再発されたので、自分の嗜好に合いそうなアイテムを物色しているうちに、このアルバムを知ったのだ。

バディマーの名前を意識するようになったのは、多くの方と同じようにマリーナ・ショウの名盤『WHO IS THIS BITCH, ANYWAY?』(75年)。ギターはデヴィッド・T.ウォーカーとラリー・カールトンの揃い踏みで知られるが、実はバディマーも3曲で好プレイを展開している。マリーナがとデヴィ爺を始めとする録音メンバーと半ば定期的に来日するようになってから、「カールトンは一緒に来ないんですかね? ところでもう一人のギターって誰?」と、何度か同じ質問を受けた。それがバディマーだった。

ジャズ・ギタリストとしてはチコ・ハミルトンやバド・シャンクのグループでレギュラー/準レギュラーを務めたようだが、我々が気になるのは70年代のスタジオ・ワーク。主だったところだけでも、フィフス・ディメンション、セルジオ・メンデス、クインシー・ジョーンズ、サンドパイパーズ、デヴィッド・キャシディ、キャス・エリオット、ランディ・ニューマン、マリア・マルダー、ニルソン、シェール、ビル・ウィザース、バーバラ・ストライサンド、ポール・アンカ、メリサ・マンチェスター、リンダ・ロンシュタットなど、AORファンにも馴染みのある名前がズラリ。マイク・ディージー(本作にも参加)らと同様、カールトンやリー・リトナー、グレイドンらの先輩格にあたり、彼らと同じセッションに参加することも ままあった。

このアルバムでは、バディマーがよくセッションに呼ばれていたウエストコースト・ジャズのトランペット奏者で、映画音楽でも大活躍したショーティ・ロジャースのカヴァーが半数。残りが主にポップ系カヴァーで、ジャッキー・デシャノンがヒットさせたバカラック作品<What The World Needs Now In Love(世界は愛を求めてる)>、ボブ・ディランの代表曲<Like A Rolling Stone>、バリー・マクガイアがヒットさせたP.F.スローン楽曲<Eve Of Destruction(明日なき世界)>、ソニー&シェール<I Got You Babe>、メル・トーメ<Cast Your Fate To The Winds>を取り上げている。

60年代半ばの作なので、クロスオーヴァー前史的な作品ではあるけれど、こういうライトなジャズ作品があったからこそ、CTIのようなイージー・リスニング・ジャズが生まれたのだろう。録音にはハル・ブレイン(ds)、ドン・ピーク(g)らも参加。また本作後に続いたバディマーのジャズ・リーダー作の多くは、実際には本作より先に録音されていたものだそうだ。